Kapitel・1-8

光源八剣士・伝説 人の章 (現代編)

瑠摩の自室には
誠希と緋影が揃っていた。

「やはり…来たか」

瑠摩の言葉に2人は頷く。

「奴等も彼女が仁天子だと気付いているのでは?」

誠希はそう言うと緋影を見た。
何も言わないが、軽く頷く。

「…かも知れない。
 しかし…どうして奴等が
 彼女を【仁天子】と認定出来たのか…」
「そうですよね。
 自分達でさえ、
 彼女をそうだと気付くには
 時間が掛かりましたから」

「……」
「緋影?」

緋影は何かに気付いたのか、
ふと瑠摩を見つめる。

「どうした、緋影?」
「…闇一族の中に
 【光源八剣士】の事を
 熟知している存在が
 居るのかも知れません」
「成程…」

瑠摩は腕を組み、
静かに考えを巡らせた。

「瑠摩様?」
「…厄介な事になったな。
 江淋が動いてくれなければ
 完全に後手に回っていたか」

何も言わないから気付いていなかったが
江淋はいつも援護射撃に回っている。

口ではぶっきらぼうだが
彼は元来 心の優しい青年だと
瑠摩は理解している。

「…瑠摩様」

心配そうな誠希の声に
瑠摩は笑顔で答える。

「大丈夫だ。
 これからも気を引き締めて
 事に掛かろう。
 敵は強大だ」
「はい」
「承知しております」

3人は固い決意を交わした。

* * * * * *

運命から逃げられない事は
何処かで自覚していた。
ただ…。

「…もう、朝か」

江淋は気だるそうに体を起こした。
流石に霊力を行使すると
翌朝に堪えるらしい。

この世界は戦闘に向いてないのかも知れない。

「そりゃ、まぁ…
 そうだろうな」

本来は戦う為に生まれてきた訳では無いのだから。

鏡に写る自分の顔を凝視し、
江淋は黙り込んだ。
刻まれた傷跡。
それだけは忘れられない。

「…魁淋(かいり)」

あの日を境に行方不明になった
自分の肉親。
ただ一人の兄。

襲撃犯に攫われた
その存在がずっと気に掛かっていた。

「今頃何処に居るんだろうか」

そっと傷跡に手を触れる。
何時からか、癖になっていた。

「お前を探し出す為に始めた戦いだった。
 最初は、そうだった。
 だが……」

江淋の眼差しは
真っ直ぐ鏡の自分を見つめる。

「今は…少し違う。
 彼女を護りたい。
 あの子は……」

そっと目を閉じる。
彼女の微笑を思い浮かべているのだろうか。

「俺が護ってやらないと駄目なんだ。
 きっと、な…」

自分の為だけの戦いから
誰かを護る為の戦いへ。

それは嘗て
自分が歩んで来た道そのものだった。
江淋も自覚しているのだろう。

「歴史は繰り返すのかもな…」

自嘲する彼の目は
もの哀しげだった。
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