Kapitel・2-10

光源八剣士・伝説 人の章 (現代編)

瑠摩の攻撃により、
手勢を失ったヘイネルが
どんな攻撃に転じてくるのか。

誠希はその時をジッと待っていた。

「此処で勝負するか、
 それとも次回に伸ばすか。
 お前の事だ、今回は退くだろう」
「…よく私の事を理解している」
「無駄に付き合いが長いって事さ」
「ふふふ…」

ヘイネルは不気味な笑みを浮かべたまま。
槍を下ろしこそしないが
瑠摩も追撃する様子は無い。

「では、親玉に早く報告に行く事だ。
 お前が戻ってくる事も
 奴は十二分に解っている筈だからな」

瑠摩の最後の言葉には
流石に返事をする気が生じなかったらしい。
ヘイネルは右手をスッと上げる。

「?!」
「大丈夫だ、誠希。
 攻撃する時のアクションじゃない」

瑠摩の言葉の通りだった。
何処からともなく生み出された黒い霧が
ヘイネルの体に纏わり着き、
やがてその存在ごと消し去った。

「もう、大丈夫だ」
「はい…。しかし……」
「どうした、誠希?」
「家の中が…」

ヘイネルとの戦闘に
神経を集中させていたのだろう。
燃え盛る家の中の様子まで
気を回す余裕は正直無かった。

「出て来るよ…」
「えっ?」

誠希に守られながら
葵は必死に江淋達の気配を追っていた。
直接感じる彼の気配が
彼女に隆臥達の無事を知らせていた。

「今、出口の近く迄来てる…」
「解るのかい、彼等の場所が?」
「何となく、だけど…。
 勝手口の所から……」
「誠希、彼女を頼む」
「はい!」

瑠摩は勝手口の場所を葵から教わると
急いでその場所まで駆けて行った。

* * * * * *

「さて、問題は此処からだ…」

隆臥と母親はまだ目を覚まさない。
呼吸はしているから大丈夫だが
異空間に存在する事での体力消耗は
尋常では無いだけに猶予は無いだろう。

「ドアを破るのか?」
「それが一番手っ取り早いが…ん?」
「どうした…?」
「扉の向こうに、誰か居るぞ?」
「敵か、江淋?」
「…【霊気】、だな。
 この家の炎と反応してるのか
 いまいち感知し辛いが……」
「炎と…?」
「瑠摩だろう、多分」
「瑠摩様……」
「こりゃ結界を補充した方が良いな。
 緋影、俺の【霊気】に同調してくれ」
「解った!」

緋影の霊気が江淋の結界に吸収され、
蒼いドームが更に色濃くなる。
その直後だった。

ドームを避ける様に出現した炎の柱が
周囲の炎を飲み込んでいく。

「乱暴なんだよ、やり方が」

不満を零しながらも笑顔で
江淋は再度隆臥を背負って
開いた勝手口から外へと飛び出す。
続いて緋影。
隆臥と母親には目立った外傷は無い。

「任務完了。お疲れ様」

瑠摩は涼しい顔でそう言うと
炎で炎を鎮火させる離れ業をやってのけた。
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