Kapitel・2-15

光源八剣士・伝説 人の章 (現代編)

『…れが、もっと早く気付いていれば…』
『…どうか、これからは……』
『どうしてこんな事になってしまったんだっ?!』

オレガ、イナケレバ…コンナヒゲキハ…オコラナカッタ?

* * * * * *

此処最近、夢見が悪い。
複数が口論し、誰かを責め…
誰かが泣いていた様な気がする。
聞き覚えの有る声、あれは…誰なんだろう?
そして…どうしてこんなに、心が苦しい?

誰に聞けばこの疑問は解決するのか。
そして、胸の痞えが取れると云うのか。

「何で俺、急に江淋の事を…?」

何故か、江淋ならば理解してくれると思った。
何の疑問も抱かずに。
それは俺が、彼奴を【信頼】しているからなのか。
それとも別の【理由】があるのか…。

まだボンヤリと意識が重い。
もう暫く、横になろう。
今度は…良い夢が、見れます様に…。

* * * * * *

「風がざわついている」

瑠摩の呟きに、誠希と緋影は顔を見合わせた。
視力に頼る事の出来ない瑠摩にとって
肌で感じる事は何よりもの情報源。
そして、それは普通に目の見れる者よりも
遥かに強力な材料にも変わる。

「風が、目覚めますか?」
「あぁ、その時は近いだろう。
 恐らく、それは本人が一番感じている」
「本人……」
「では、やはりあの辰風 隆臥と云う青年は」
「…そう云う事だ」
「……」
「運命とは、実に皮肉だな」

瑠摩の言葉に誠希は項垂れ、緋影は表情を強張らせた。
瑠摩の言う【運命】の意味を、彼等は痛感している。
だからこその反応だった。

「瑠摩様…」
「今はまだ良い。だが、何れ知る事になる。
 その時に誰が苦しみ、誰が悲しむのか。
 それも…我々には解っている」
「だからこそ、俺達は…」
「緋影……」
「アイツを、一人には出来ない」
「……」
「それで良い」
「瑠摩様…」
「それで良いんだ、緋影」

瑠摩は静かに頷き、見えぬ目を空へと向けた。
嘗ての自分達の姿を
其処に追い求めているかの様に。

「誰を守りたいのか。
 誰の為に戦うのか。
 己の目的を見誤る様では
 誰も守れやしない。
 只…それだけの事だ」
「瑠摩様…」
「風の戦士は、その事に気付くだろうか。
 …否、気付いてもらわなければならない。
 二度と悲劇を繰り返さない為にも、な」
「……」

静かに語られた瑠摩の言葉。
だが、その静かさが更なる言葉の重さを表現する。
逃げられない運命に喰い潰されるのが先か。
それとも、一矢報いて高みを目指せるのか。
全ては、戦士である自分達の指針に関わってくる。

「臆する事は無い」

直後の瑠摩の微笑みに、
誠希と緋影は力強く頷いた。
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