Kapitel・2-20

光源八剣士・伝説 人の章 (現代編)

「ショックだったか?」

帰路の途中、そう江淋から声を掛けられた。
葵は何の事か解らず、目を大きく開いたままだ。

「隆臥が【光源八剣士】だったと云う事実」
「…本人程じゃないかも」
「そんなもんか」
「実感は薄いかもね…」
「まぁ、そうかも知れないな」
「江淋は…」
「ん?」
「江淋は、どの位前に知ったの?
 自分が【光源八剣士】の一人だって」
「……」
「あ、答え難い事だったらそのままで…」
「5歳の誕生日を迎えた時、かな」
「5歳でっ?!」
「あぁ。やはり今回同様に襲われてな」
「それじゃ、御家族は…」
「…死んだよ」
「……御免」
「どうしてお前が謝るんだ?」
「だって、私…聞いちゃったから、その…」
「答えたくないと思ったら返答しなかったさ。
 こうして答えたって事は、
 お前だったら話しても良いと俺が判断したって事なんだから」

そう言って笑顔を浮かべる江淋に対し
自責の念から抜け出せないまま葵は泣きそうな表情だった。

「何でお前が泣くんだよ?」
「だって……」
「それが俺達の戦いなんだ」
「江淋……」
「あの時は本当に俺もまだ幼かった。
 当然、誰かを守る力なんて無かった。
 だからこそ、その悔しさをバネに生きてきた。
 今度こそ…この手で大切な者を護る為に、な」
「江淋…」
「敵は油断なんかしてくれちゃいないからな。
 俺が強くなるしかない。誰よりも」

江淋の表情は何かを悟ったかの様な穏やかさが有った。
葵がまだ知らない江淋の姿。

「戦いはまだまだこれからだ。
 俺達はまだ、仲間を集め切ってさえいないんだからな」
「…どれだけの人が集まってるの?」
「俺が知る限り、隆臥を含めて6人」
「まだ2人足りないんだ…」
「…あぁ」

【光源八剣士】、残りは確かに2人。
内一人はこの世界に存在する気配がない。
恐らく、もう一つの世界に生まれ落ちたのだろう。
そして…最後の一人となる筈の【仁天子】の存在。

「早く揃うと良いね、仲間」

葵はそう呟いて微笑を浮かべている。
確かに…揃ってしまえば楽になれるかも知れない。
しかし。

『思い出さなくてもいい事迄も思い出してしまう。
 最大の敵は、過去の自分達の記憶そのものかも知れないな』

甦った戦士達は、皆一応に前世の記憶に苦しんでいる。
逃れられない楔を打ち込まれたまま
新しい人生を又 戦いに消費させる。
何処かで終止符を打たなければならない。
その為には絶対に必要なのだ。
【光源八剣士】全員の復活が。
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