Kapitel・2-7

光源八剣士・伝説 人の章 (現代編)

煌く碧い光が全身を包み
それがそのまま鎧と化す。
この姿こそが【光源八剣士】の正装。

江淋は左手に水の霊気を集中させ、
愛用の大剣を生み出した。

「さて…高みの見物はその辺にして
 さっさと出て来やがれ」
『昔から鼻だけは良く利く様で』
「…この声」

声の主には江淋も緋影も覚えが有った。
寧ろ、嫌と云う程覚えが有る。

「ヘイネル……」
「御名答。久しぶりですね、【光源八剣士】」

ヘイネルは淡い朱色の鎧を身に纏い
薄い笑みを浮かべている。
白銀の長髪を風に靡かせ
炎の先で立っていた。

「折角此方側に来たのでね。
 御挨拶代わりですよ」
「この家を襲撃したのは何が狙いだ?」
「別に何処でも良かったんです。
 貴方達に会えるのならね」
「何…?」

昔からヘイネルはこの様な言動で
光源八剣士達を欺いて来た。

闇一族、三頭と呼ばれる一角。
頭脳は三頭の中では最も切れ者。
それだけに、油断のならない存在。

ヘイネル自身は男でも女でもない。
それ故に性別を武器にする術にも長ける。

「しかし、大掛かりな仕掛けを作っても
 釣れたのが貴方達ですか…。
 非常に残念です」

心底つまらなそうにヘイネルは続ける。
その言い分に何が含まれているのか
少なくとも江淋は理解していた。

「お前の望む奴は
 お前の相手をしてるほど暇じゃないんだ。
 俺は差し詰め【代理】と云う所だ」

毒を吐くのならば江淋も負けてはいない。
フッと鼻で笑い、剣を構える。

「やるのか、やらないのか?」
「仕方が無いですね。
 その【用事】とやらが済むまで
 貴方の相手でもしておきましょうか」
「そいつは光栄だ…!」

江淋の姿が一瞬の内にヘイネルの眼前に迫る。
戦士としては大型の江淋では在るが
動きは緋影のそれに少しも劣らない。
動きの切れが有る上に破壊力も備わっている。
だからこそ、闇一族は今でも恐れる。
闘神と呼ばれるこの戦士を。

叩き割らん勢いで振り下ろされた剣を
ヘイネルは巧みにかわした。

「相変わらず容赦無いですね」
「お前相手に手加減など必要無かろう?
 毎度毎度姑息な手を使いやがって」
「貴方と違って私は非力なんです。
 頭脳戦に持って行かなければ
 屍を晒すのは私の方なんですから」
「是非晒して欲しいもんだっ!!」

江淋の攻撃は少しの加減も無い。
しかし、ヘイネルの回避速度の方に
多少の分が有るらしい。

「ん?」

緋影は若干ではあるが
ヘイネルの変化に気付いた。

「鎧が…。亀裂が入っている」

朱色の鎧の所々に細かい亀裂が見える。
確かに直撃は防いでいるが
それでも剣の風圧までは
完全に回避出来ていないのだ。

「アイツ…また、強くなった…」

江淋の能力の向上に
緋影は我が事の様な喜びを覚えていた。
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