Kapitel・3-2

光源八剣士・伝説 人の章 (現代編)

葵と隆臥は改めて【光源八剣士】の存在を聞かされる事となった。

この世界と対になる、もう一つの世界の事。
自分達の前世の事。
自分達を襲撃した敵組織 【闇一族】の事。
そして光源八剣士の証となる【光源文字】の事。

江淋は【義】、隆臥は【信】。
【戒】の瑠摩、【忠】の誠希、【勇】の緋影。
そして【智】の聖。

「だけど」

瑠摩の説明を遮るかのように聖が口を挟む。

「葵。君には【光源文字】が未だに発現していない。
 当然、嘗ての記憶も蘇っていないんだろう」
「聖」

咎める様に瑠摩が返す。
葵自身も自覚はしていた。
『自分は部外者』なのだと。
だからこそ、瑠摩は反論に転じた。
葵の気持ちが理解出来ていたからこそ。

「記憶の再生や【光源文字】の発現には個人差がある。
 それに」

瑠摩は一瞬 江淋に視線を向けたようだった。

「能力が先に解放される事もあるからね。
 彼女に【光源文字】が発現してくれれば
 確かに我々にも有り難いが
 それが全てでは無いと思うよ」
「…一理あるな」

聖は瑠摩の発言に一応の納得をしたらしい。
しかし今度は隆臥が不満げな溜息を漏らした。
大切な幼馴染みがコケにされたとあっては
我慢が出来なかったのだろう。

「気に障ったのならば謝罪するよ。
 しかし僕はこういう性格なものでね。
 白黒がはっきり定まらないと落ち着かないんだ」

聖は淡々とした口調でこう述べた。

「性格…ねぇ」

勿論 隆臥自身、今の発言で納得出来た訳ではない。
しかしこの場で揉め事を起こす事だけは
避けたいとも考えていた。

仲間の為。そして、他ならぬ葵の為にも。

「瑠摩。今日は説明と顔合わせがメインだったよな」

江淋は周囲を見渡してからこう発言した。

「あぁ。その予定だったし、その様に進行もした」
「じゃあ今日はもうお開きって事で」

葵、隆臥の負担を減らす為なのは
瑠摩も理解していた事だった。

「そうだな。では案内を江淋に託すか。
 我々は引き続き、敵の動きを解析する事にする」
「頼んだぜ。じゃあ、帰るか」
「「えっ?!」」
「帰るんだよ。
 あんまり此処に長居をすると
 窮屈で息が詰まってくる」

江淋の悪態を耳にした誠希は
その場で思わず吹き出してしまった。

「…何だよ」
「いや、江淋の口から冗談が飛び出すとは
 全く思ってもみなかったもので…つい…」
「冗談では無く、至極真面目に本音なんだがな」

江淋の言葉の真意は何処まで誠希に伝わったのか。
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