Kapitel・3-3

光源八剣士・伝説 人の章 (現代編)

「さっきはありがとう」

突然そう声を掛けられ、
江淋は驚いた表情で隆臥を見た。

「正直…【光源文字】ってのが出ただけで
 他は何も解らないのに
 勝手に話を進められてもついていけなかったしさ」
「そりゃそうだ」
「だろ?」
「あぁ。聖以外とはそれなりに付き合いも長いが、
 俺自身はそもそも【光源八剣士】ってものに
 執着して無いからな。
 興味も湧かん」
「でも…敵はそう思ってないのよね」

葵の一言に江淋は大きく頷いた。

「それも困るよな」
「此方の言い分に対して
 聞く耳持って無いってのはキツイぜ。
 何でも大昔からの付き合いらしいがな。
 今の俺には関係無かろうって思いながら戦ってる」
「そうなんだ…」
「俺も死にたくはないからな」
「当たり前だよ!」

強い隆臥の言葉に江淋は笑顔で返した。

* * * * * *

江淋、隆臥と別れ自室に戻った葵は
改めて【光源八剣士】の存在を思い返していた。
だが頭の中で纏めようにも膨大な情報に圧迫され
巧く整理がつかない。
大学ノートを取り出し、
ぎこちない相関図を書き始めた。

「え~っと…。
 先ず【光源八剣士】という存在は…」

遥か昔、闇一族と戦うべく存在した戦闘集団。
その身に【光源文字】を宿した戦士達。

「八剣士と云う位だから
 当然8人居る訳なんだけど…
 今は【力天子】と【仁天子】が不在だから
 6人が存在してる…か」

奥の間に用意された情報ルームで顔を合わせた6人。
彼等が伝説の戦士である事を理解する。
先ずはそこからだと判ってはいる筈なのだが
葵の気持ちはどうも其方に向かってくれない。

「【光源文字】って言ってたっけ。
 一文字だけ漢字が浮かび上がるのよね。
 何か意味が有るのかな?
 例えば、江淋なら【義天子】だから…」

葵は机に置いてある漢和辞典を開いてみた。

「『条理。正しい道。道理にかなったこと。人道に従うこと。』
 …確かに、道理に外れた事はしたがらないわよね。
 もう一つの意味は…
 『利害をすてて条理に従う。公共のために尽くす気持。』かぁ…」

改めて江淋を思い浮かべてみる。
彼の事を全て知っている訳ではない。
それでも、感じ取る事は出来る。

「自分の【義】を信じて…
 生きている人、なのかも知れない」

江淋に聞けば、答えてくれるだろうか。
まだ見ぬ【仁天子】の事を。
聞きたい様な、怖い様な。

「うん。今日は休もう。疲れちゃった…」

明日には何かが動き出しているかも知れない。
そんな不安を胸に、葵は就寝する事にした。
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