突然そう声を掛けられ、
江淋は驚いた表情で隆臥を見た。
「正直…【光源文字】ってのが出ただけで
他は何も解らないのに
勝手に話を進められてもついていけなかったしさ」
「そりゃそうだ」
「だろ?」
「あぁ。聖以外とはそれなりに付き合いも長いが、
俺自身はそもそも【光源八剣士】ってものに
執着して無いからな。
興味も湧かん」
「でも…敵はそう思ってないのよね」
葵の一言に江淋は大きく頷いた。
「それも困るよな」
「此方の言い分に対して
聞く耳持って無いってのはキツイぜ。
何でも大昔からの付き合いらしいがな。
今の俺には関係無かろうって思いながら戦ってる」
「そうなんだ…」
「俺も死にたくはないからな」
「当たり前だよ!」
強い隆臥の言葉に江淋は笑顔で返した。
江淋、隆臥と別れ自室に戻った葵は
改めて【光源八剣士】の存在を思い返していた。
だが頭の中で纏めようにも膨大な情報に圧迫され
巧く整理がつかない。
大学ノートを取り出し、
ぎこちない相関図を書き始めた。
「え~っと…。
先ず【光源八剣士】という存在は…」
遥か昔、闇一族と戦うべく存在した戦闘集団。
その身に【光源文字】を宿した戦士達。
「八剣士と云う位だから
当然8人居る訳なんだけど…
今は【力天子】と【仁天子】が不在だから
6人が存在してる…か」
奥の間に用意された情報ルームで顔を合わせた6人。
彼等が伝説の戦士である事を理解する。
先ずはそこからだと判ってはいる筈なのだが
葵の気持ちはどうも其方に向かってくれない。
「【光源文字】って言ってたっけ。
一文字だけ漢字が浮かび上がるのよね。
何か意味が有るのかな?
例えば、江淋なら【義天子】だから…」
葵は机に置いてある漢和辞典を開いてみた。
「『条理。正しい道。道理にかなったこと。人道に従うこと。』
…確かに、道理に外れた事はしたがらないわよね。
もう一つの意味は…
『利害をすてて条理に従う。公共のために尽くす気持。』かぁ…」
改めて江淋を思い浮かべてみる。
彼の事を全て知っている訳ではない。
それでも、感じ取る事は出来る。
「自分の【義】を信じて…
生きている人、なのかも知れない」
江淋に聞けば、答えてくれるだろうか。
まだ見ぬ【仁天子】の事を。
聞きたい様な、怖い様な。
「うん。今日は休もう。疲れちゃった…」
明日には何かが動き出しているかも知れない。
そんな不安を胸に、葵は就寝する事にした。