Denken Sie an jedem anderen

光源八剣士・伝説 天の章 (神代編)

「貴方は、戦士なのですか?」

帯剣している彼の姿が
エリスはずっと気になっていた。
最初の出会いから既にどれ位の時間が
経ったであろうか。

アリシオンは鎧を着けながら
表情を曇らせて答えた。

「…まあな。下らん戦争の担い手だ」
「下らない?」
「下らんさ。
 いくら戦ったって、増えていくのは死者と怪我人だけ。
 指図する奴はそんな現状を見ようとしない」
「確かにそうですね」

エリスは深く頷いた。
常日頃感じ取っていた疑問。
それを戦士である彼も感じ取っている。

「私は戦場を知りませんが…」
「知らない方が良い。
 知っても何の得にならん」

エリスの思いを直接言葉に出す。
彼もまた自分と同じ考えを持つ者…。
そして、その思いに反して戦う立場に居る者。

「…どうした?」
「アリシオンさん、でしたね」
「さん、は止めてくれ。柄じゃない」
「じゃあ」
「アリシオンでいい」

アリシオンは真っ直ぐにエリスを見つめていた。

「綺麗な琥珀色の瞳だな」
「貴方の髪も目も…綺麗…」

「怖くないのか?」
「怖くなどありません。
 だって…貴方はとても綺麗な目をしているから」
「…初めて言われたよ」

思わず苦笑を浮かべるアリシオンだが
その表情はまるで少年の様な幼さだった。

「…アリシオン、また逢えますか?」
「必ずとは約束出来ないが。
 此処に来れば もしかすると…な。
 君自身はどうなんだい?
 又、此処で逢えるだろうか?」

エリスは満面の笑みを浮かべた。

「貴方がそう望んでくれるのなら
 私…又此処に来ます。
 貴方に逢いに」
「待ってるよ」
「どうせ誰も私の行き先なんて
 気付いていないから」
「…だと、良いがな」

アリシオンは鎧を着直すと
そっとエリスの頬に口付けを落とした。

「約束だ。又 逢おう、エリス」
「アリシオン……」

一礼し、彼女は自分の国へと向かって走り出した。
その後ろ姿を見送るアリシオン。

「彼女が光一族 族長の妹か。
 噂には聞いていたが、
 優しい心と瞳を持つ」

その瞳には戦士に似合わない穏やかさを秘めていた。

「一族を率いる長の妹君と
 その一族に敵対する一軍の将、ね。
 この戦いが下らないと言う事は
 他ならぬ彼女が証明してくれた」

アリシオンの漆黒の瞳は
暮れ行く夕陽を見つけていた。

「願わくば」

一息吐いてから言葉に代える。

「意味の無い争いの終止符を望む者が
 彼女以外にも存在する様に…」
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