Denken Sie an jedem anderen

光源八剣士・伝説 天の章 (神代編)

エリスとアリシオン。

2人の密会は
誰にも邪魔されないこの空間で
静かに愛を育んできた。

この場所に居る時だけ、
2人は本当の自分に戻れた。
光も闇も関係ない。
在るがままの2人の姿に。

「相変わらず…戦いは減らない。
 貴方の傷も……」

エリスは哀しそうに
その傷に触れる。

「許して、アリシオン」
「それは俺の台詞だ。
 お前の同胞をこの手で殺めているのは
 間違い無く…」
「止めて、アリシオン!
 貴方の所為じゃない……」

「エリス…。
 泣くな。泣かないでくれ…」

アリシオンは力強く
彼女を抱き締める。

「アリシオン…」
「お前に泣かれると…
 俺はどうしたら良いのか判らなくなる。
 だから…泣かないでくれ。
 頼む……」

短めの黒い髪が
陽の光を受けて輝いている。

「光も闇も、関係無い。
 私は…貴方が好き。
 …大好き!」
「エリス…」

「私はアリシオンが好き!
 アリシオンが居てくれたら…
 私はもう……何も要らない!
 全てを捨てても良い!」
「…エリス」

人に疎まれた経験しかない
アリシオンにとって、
エリスの愛の告白は
それだけで衝撃だった。

そして、彼は思い悩んだ。
この想いを成就する為に
一体自分に何が出来るのか。
一介の戦争屋でしかない自分に。

彼女を愛しているのは事実。
そして彼女を守りたいのも事実。
答えは、見えていた。

* * * * * *

「エリス?」
光赦菩来に呼び止められ、
彼女は怪訝そうな表情を浮かべた。

「…何?」
「貴女、最近よく
 宮殿を抜け出しているそうね…」
「侍女がそう言ったの?」
「……」

姉は困った表情で
彼女を見つめている。

「一々報告しないといけない訳?」
「エリス…」

「私、好きで
 長の一族に生まれた訳じゃない。
 自分の未来は自分で選ぶわ」
「…愛する人が、出来たの?」

姉は、光赦菩来は
全てを見通していた。

いつかそうなる様な気がしていた。
エリスの性格は熟知している。
いつかはそれを行動に起こす事も。
抑え付けても無駄である。
彼女は重石すら撥ね退けて
自分の思うがままに生きていく。

「反対、しても……」
「…反対など、しません。
 貫き通しなさい、エリス。
 自分の想いを。私の分まで」
「姉さん……」

エリスは今、初めて
光赦菩来の心を知った。
彼女の苦しい立場を知った。

「光と闇の枠を超えて…
 愛する人と切り開きなさい。
 自分達の未来を……」

光赦菩来の微笑みに
エリスもまた、微笑みで返した。
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