Frieden

光源八剣士・伝説 天の章 (神代編)

今迄誰にも告白出来なかった。
その事実が恐ろしくて、
自分の胸の内に秘めていた。

だが、何時までも逃げていてはいけない。
俺は裁かれなければならないのだ。
あの男によって。

そして…俺が犯した【罪】は…。

* * * * * *

光一族の宮殿には
【母の庭】と呼ばれる小さな庭園が在る。
正門の程近く、その庭は存在していた。

正門を通され、アリシオンは一人
母の庭で待たされていた。
こうして闇一族の自分が光一族の長と
謁見出来ると云う事に驚きを隠せないが
今は使命を全うする事だけを
念頭に置かなければならない。

そんな時であった。

「此処で何をしているの?」

身形は上品な少年が、此方を見つめていた。
光一族の一員としては珍しい
深紅の髪と瞳を持つ少年。

「光赦菩来様にお目通りをな」
「光赦菩来様のお部屋に行くの?」
「行きたいのだが、どうしたものかと…」
「じゃあ、案内してあげるね」
「君が?」
「うん」
「…そうか。有難う。
 私の名はアリシオン。君は?」
「ワイバード! ワイバード=フレイア!」
「そうか…フレイア伯の子息が君か」

アリシオンの大きな手が優しく
ワイバードの頭を撫でる。

「フレイア伯も立派な将軍で在らせられるが…
 君はきっと、父上を超える存在となるだろう。
 どんな未来が待とうとも、君ならば大丈夫だ。
 君に宿る炎の霊気ならば」

ワイバードは嬉しそうにアリシオンを見つめ、
やがて二人は手を繋いで
光赦菩来の待つ部屋へと向かった。

全ては、其処で終わる筈だった。

* * * * * *

それよりも数刻前。

光赦菩来は一人息子のシャラと共に
自室からは離れた場所に居た。
先読みの儀式は2日後に控えていたのだが
元老院が儀式の繰上げを決定した為だ。

「お母様…」

何処か不安げに自分を見つめるシャラ。
まだ齢5歳とはいえ
シャラには周囲の変動を見通す力が備わっている。
彼は何か只ならぬものを感じ取ったのだろう。

「シャラ…。お前はこの光赦菩来の血を継ぎし者。
 いずれは光一族を守る為に戦わねばならぬ者です。
 どんな事が遭っても、怯んではなりません。
 敵は其処彼処に息を潜めて隠れているのですから」
「解りました、お母様」

シャラは笑顔を浮かべようとするが
その目が一瞬、何かを捉えた。

「お母様…」
「何ですか? シャラ」
「星が…堕ちます……」
「…どんな星なのですか?
 解りますか? シャラ」
「大きな…とても大きくて、
 温かな光を抱く星…」

それが何を意味しているのか
光赦菩来には瞬時に理解出来た。
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