半覚醒した十六夜に真面な説明もしないまま
激しく交わり続けている。
抵抗は無い。肯定するかの様に十六夜も強く求める。
此処が何処で、俺達がどの時代に居るのかも
錯覚してしまう位、もう互いしか見えていない。
乱れた呼吸の合間に微かに届く十六夜の声。
其処には安堵の色が見えた。
もう二度と放す事は無い。
互いの、この腕を。
「鳴神。今、朔耶から連絡が入った」
乾月が縁側に姿を現した。
背を向けたまま、鳴神は小さく頷く。
「明日、蓮杖神社に集まって欲しいそうだ」
「其処で答え合わせって事かい?」
「あぁ。そう解釈しても良い」
「いよいよだな」
「そうだ。漸く、奴と対峙出来る」
遠慮無く真横に座る乾月の表情を横目で確認するが
彼はずっと笑みを浮かべている様だった。
「師匠ってさ、本当に恐怖を表に出さないよな。
恐怖心ってのを知らない人間みたいに」
「多少は知ってるさ。でも今は別に恐怖でも何でもない」
「それが大したもんだって言いたいんだが」
「私なんて大したもんじゃないよ。
それなら弓ちゃんの方がずっと凄いんじゃない?」
「まぁね」
月夜が優しく日本庭園を照らしている。
乾月と鳴神、二人の影も静かに室内へと延びていた。
翌日。蓮杖家の客間には
朔耶、十六夜、弓、乾月、鳴神の他に
寿星、繊、神楽と【妖刀】の意識体達が姿を見せていた。
「此処に揃ってもらった全員があの巻物を読破したと思う」
朔耶は開口一番にそう確認した。
先ずは其処から切り出さなければ話にならないからだ。
「あの巻物は十六夜の祖父、賀茂 礼惟が遺した物だ。
彼は千年前、この街を…都を或る存在の脅威から護る為に
特殊な結界を張り巡らせた」
「それが…【四神結界】って事ッスか?」
「そうだ。そして…【妖刀】は四神と密接な関係にある」
「あれ? だとすると…数が合わない事無いッスか?
【妖刀】は5本なのに…」
「【四神結界】の要は東西南北の四点と、その中央。計五点だ」
寿星の疑問に口を挟んだのは十六夜だった。
「北の玄武に【兼元】、東の青竜に【村雨】、
南の朱雀に【陽炎丸】、
西の白虎に【村正】。そして…中央に【虎徹】」
「一寸待て、十六夜。それって…」
「鳴神の思った通りじゃ。
それぞれ【妖刀】の安置場所に合致する」
「!!」
「【妖刀】の元来持つ力はそれぞれの神獣の力に比例している。
【妖刀遣い】はそれ故、神の力を行使しているとも言える」
十六夜は其処に居る全ての者の顔を
見渡しながら静かに語り出した。