狙 い

16. 出現(第弐幕)

「どう云う意味なんだ、朔耶?
 アタシ達にも説明してくれないと…」
「十六夜は世が世なら
 玄武帝の次の帝になっていた人物だ。
 その暁には【白虎帝】と
 名乗る事になっていた」
「白虎……」
「つまり、私に繋がるあらゆるものを
 この世から消すと言いたいのだろう」

朔耶の説明を裏付ける様に十六夜が補足した。
だが、その補足も又 意味が解り難い。

「六条の奴は何処迄も
 十六夜を束縛したいんだろうな」
「ストーカーみたいだな。
 此処迄来ると…」
「そう云う事さ。
 六条の奴は昔からそうだった。
 或る時を境にして
 異常に十六夜に、九条尊に執着した」

昔を思い出したのだろう。
苦虫を潰した様に朔耶は顔を顰めた。

「朔耶」
「ん? 何だ、十六夜?」
九重ここのえを強襲する策じゃが…
 奴等の目を欺く術は有る」
「マジでかっ?!」

寿星は興奮して声を上げるが
すかさず乾月から肘鉄を食らった。

「百鬼夜行は私が引き受けよう」
「えっ?!」
「あんな化け物を、どうやって?!」

寿星と繊が再び同じタイミングで声を上げた。
神楽は黙って十六夜を見つめている。

「六条は私の動向に注目している筈。
 私が百鬼夜行と相対している間は
 意識が其方に集中していると思われる」
「成程。その隙を突くのか」
「左様」
「しかし、一人で百鬼夜行に挑むのは…」
「一人では無い」
「?」
「その為には祭巫女の力が必要。
 彼女等の舞と唄で
 白虎を封印から解き放つ」

神楽は静かに、しかし確りと頷いた。
彼女は最初から
十六夜の作戦を理解していたのだ。

火産山ほむすびやまに隠されている【舞台】の場所は
 代々八乙女の秘宝として
 伝えられております。
 其方迄は私が御案内致しますわ」
「宜しく頼む、神楽」

十六夜の作戦は部隊を二つに分ける事だった。
百鬼夜行を食い止める係。
そして、九重ここのえを強襲する特攻隊。

「私は九重ここのえに向かおう。
 あの場所は表家業で
 何度も訪れた事が有る。
 土地勘ならこの中で一番有る筈だ」
「俺も行こう」
「鳴神…」
「暴れたいんでね」

鳴神はそう言ってシニカルな笑みを浮かべた。
乾月も又 微笑を浮かべている。

「決まりだな。
 寿星、お前は十六夜達と火産山ほむすびやまへ向かえ」
「兄ぃ…」
「お前の属性は神楽と相性が良い。
 然も火産山ほむすびやまはお前と同じ【土】属性だ。
 十六夜と、神楽達を…護ってやれ」
「…はいっ!!」

神楽を守護する人を与えられ
寿星の目の色が途端に変わった。
彼の性格を把握している朔耶らしい采配に
十六夜と乾月は顔を見合わせ
フッと笑みを漏らした。
Home Index ←Back Next→