二人組

4. 商売敵(第壱幕)

ショーウィンドゥを眺める古風な格好の女性。
この辺りでは見かけない姿だと
寿星は暫しその女性の姿に釘付けになった。

「可愛いなぁ~」
「何? ナンパの虫が騒ぎ出した?」
「兄ぃ…」
「どれ、お前の御眼鏡に適った娘は…と」

寿星の視線を追う朔耶だったが、突然表情を険しくさせた。

「兄ぃ?」
「出やがったぜ、寿星」
「【魔】ですか?」
「あぁ。硝子ガラスに映ってるだろ」
「あ…本当だ」
「依頼は受けちゃいないが…掃除するとすっか!」
「りょーかい!!」

戦闘モード宜しく、朔耶と寿星は
ショーウィンドゥに向かって駆け出す。

「おい! 危ないから其処から離れろ!!」

先程気にしていた女性は【魔】が出現する直ぐ傍に立っている。
寿星は呪符を取り出しながら彼女に避難をする様に、と叫ぶ。

「邪魔すんじゃないよ!」

鋭い女性の声が聞こえたのはその直後だった。

「何?」
「コイツはアタシ達が誘き出した獲物なんだ。
 横取りなんて許さないよ!」
「な、何だ…お前?」
「【怨霊ハンター】のせんを知らないとは…
 アンタ達、モグリだろ?」
「「はぁ~?」」
「繊、来ます」

寿星がお気に入りの古風な女性は
勝気な発言をする繊に対し、敵の襲来を告げる。

「さぁ、来な!
 アタシのこの【陽炎丸かげろうまる】で切り刻んでやるっ!!」

啖呵を切る繊の右手には
十六夜や鳴神の時に見たのと同じく
朱色に発光する【妖刀】が出現した。

「あれ…【妖刀】だな。あの女も【妖刀遣い】か」

【妖刀】を見たのはこれで3度目だ。
十六夜が初めて使用した時は
余りの美しさに目を奪われたが
鳴神や繊の持つそれは何かが違う気がする。

「行くよ!」

繊の動きは寿星の攻撃に似ている。
一打の重みよりも回数を重視している。
それを補助しているのが先程の彼女の術の力だった。

(この力の波動は…十六夜の物と似てる)

朔耶は深追いせず、2人の戦いぶりを見ていた。
術師としての資質は高いのだろう。
だが、何かが欠けている気がする。致命的な【何か】が。

(危なっかしい…。十六夜や鳴神の戦い方とは全然違う。
 一体何だ? この不安感は…)

豪快に啖呵を切って見せたものの繊はジリジリと圧されつつあった。

(そうか、【場数】だ。実戦経験が浅いんだな、あれは)

幾ら潜在能力が高くても
それをどう生かすかは実戦経験の数が物を言う。
退魔業は正に【命掛け】なのだと云う事を
朔耶も寿星も充分承知している。
それはヤスの一件や、十六夜と鳴神の決闘で
嫌と言う程感じ取ったからだ。
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