すると其処には見覚えのある二人組が。
繊と神楽も敵の存在を感知したのか又もやブッキングした様だ。
「先日はどうも…」
既に臨戦態勢の繊の言葉は挨拶なのか宣戦布告なのか判らない。
「判ってると思うが…ゲームじゃねぇからな」
「言われなくても」
「兄ぃ、どうやらお出でなすった」
「数が多いな…。
この間のマネキン程じゃねぇけど流石に街中で暴れられると厄介だ」
「私が結界で抑え込みます」
「大丈夫なのかい? 神楽」
「長い時間は保てませんが、少しなら…」
「寿星」
「あいな!」
「お前の呪符で援護したらどうだ?」
「多少の補助は出来ますけど…どれだけ保つか判りませんよ」
「やれるだけやってみよう。異存はねぇな、繊?」
「…神楽に何か遭ったら、絶対に許さねぇからな……」
「お~怖っ…」
「大丈夫です、繊。
…寿星さんでしたね。宜しくお願いします」
「キツくなったら速めに解除して俺達に任せれば良いッスから」
「しかしそれでは…」
「何とかします。ねぇ、兄ぃ?」
「勿論だ」
繊と神楽は顔を見合わせて頷いた。
異存が全く無い訳では無い。だが、意地を張っても勝利は掴めない。
「行きます」
神楽が精神集中に入る。周りの空気が冷え始める。
「
神楽の口から静かに唱えられる
そして、目に見える形で張り巡らされる結界。
まるで蜂の巣の様に【サ】の梵字が空中に広がり
其処から硝子の様に透明な幕が張られた。
「よし、頼むぜ!」
声を掛け、寿星は周辺に18枚の呪符を放った。
それが結界に溶け込み、層を厚くする。
「時間にして凡そ15分って所か。
いずれにせよ、早期決着を目指すだけだ」
「…邪魔するなよ」
「まだ言うか、お前は…」
「アタシは手柄が欲しい。…神楽の為にも」
「……」
繊が【陽炎丸】を構える。
神楽の為に戦う彼女の姿はまるで『十六夜の為に強くなる』と誓った
自分のそれと同じだった。
(そう云う事かい…。だから十六夜は、あんな事言ったんだな)
意を決し、朔耶も札を取り出した。
十六夜から託された例の札である。
「…式神? アンタ、式神遣い?」
「訳有りでな。助っ人だ」
「?」
「鬼が出るか、蛇が出るか。頼むぜ、俺の助っ人さんよッ!!」
蠢く【魔】の集団に向かい朔耶は思い切り札を投げつけた。
やがてそれは発光し、真っ白な鳩へと化身する。
「行くぜっ!」
鳩の軌道に倣い、朔耶が駆け出す。
一瞬遅れて、繊がそれに続いた。