再 戦

6. 再戦(第壱幕)

【村雨】は無言で十六夜を一瞥した。
十六夜程の男が何故 此処迄朔耶に手を貸すのか。
それが理解出来ないのだろう。

まぁ、良い。
 仮に新たな力を手に入れたと言うのであれば
 その力ごと『捻じ伏せて』やれば良いだけ


【村雨】も又 己の刀を手に取ると
前回同様、その姿を綺麗に眩ませた。

さぁ来い、朔耶。その自信、この手で潰してくれよう

朔耶もこの戦法は予想していた。
今の所、【虎徹】が反旗を翻す気配は無い。
目の前の【村雨】との戦いに専念出来そうだ。

(十六夜の為にも…二度も負ける訳にはいかない。
 俺の全てを賭けて、勝ちを掴み取る…)

意を決し、踏み込む。
次の瞬間、2本の刀からは激しい火花が放たれた。

* * * * * *

十六夜は厳しい表情で戦いを見守っていた。

【虎徹】が朔耶を認め、
彼の手として働く事は十六夜としても想定内だ。
朔耶の身体能力の高さも織込み済みである。

(ならば何故、【村雨】に余裕を感じる?)

十六夜の不安は【村雨】の放つ気配だった。
勿論、【村雨】が姿を消している以上
その表情を目視する事は出来ないが。

(何か有る筈だ。【村雨】のあの余裕。
 私がまだ気付いていない【何か】を…
 早く見付けなければ…)

実力は拮抗している。
朔耶の能力、そして【虎徹】との意識共有も
問題無いからこその成果。
だが、それだけでは勝てない。
勝てなければ【契約】は出来ない。

(意識…、共有…?)

十六夜は傍と気付いた。
恐らくそれを【村雨】も察したのだろう。

気付いた様だな。
 このまま戦っても、朔耶に勝利は無い事を


直接自分の脳に語り掛けて来る声。
それが【村雨】の声である事は容易に理解出来た。

お前の賭けも外れた…と云う事だな。
 さて、どうする?

「…まだじゃ。まだ、勝負は着いておらぬ」
そうかな?
 確かに朔耶は【妖刀】を使いこなしている様に見える。
 だが、あくまでも【妖刀】を
 『刀として』扱ってるに過ぎない。
 奴は【妖刀】の真の力を引き出せてはいない


【村雨】の言う通りである。
朔耶は確かに【虎徹】を
従来の日本刀として扱っているに過ぎない。
相手が【妖刀】で在る以上
【虎徹】の真の力を引き出さなければ苦戦は必至。
しかし、朔耶は まだその事に気付いていない。

「…確かに、このままでは」

勝たなければ契約には漕ぎ着けない。
その時点で、朔耶の負けが決まってしまう。
この勝負に【引き分け】は存在しないのだ。

さぁ、十六夜。お前はどう動く?
Home Index ←Back Next→