それ迄座って
庭をカメラのファインダー越しに眺めていた
何事かと
「丁度、明日で10000日」
「?」
「
「あぁ…。もうそんなになるんだ」
「それでも父親か?」
「息子が生まれて何日目かなんて数えてねぇよ。
乳飲み子時代ならともかく…」
朔耶はそう言って苦笑いを浮かべている。
「で、何だ? いきなり」
「以前お
覚えておるか?」
「約束?」
「まさか忘れたとは言わせんぞ?」
十六夜の剣幕に少し朔耶はたじろいだ。
が、直ぐに態勢を立て直す。
「覚えてるよ」
「そうか。ならば良し」
「覚えてはいるが、そもそも大丈夫か?」
「大丈夫、とは?」
「今の弦がお前のお眼鏡に適っているとは
到底思えないんだが…」
「適ってはおらんな」
「やっぱり…」
やれやれと肩を
朔耶は手にした酒を飲み干した。
「弦もお前に目を付けられるとは
喜んで良いのか悲しむべきなのか」
「お主は信じておらぬのか?
己の息子の才覚を」
「
ギリギリ迄追い込まないと
本当の自分に気付かないだろうさ」
「…成程」
十六夜は静かに窓の外の月に目をやった。
「ならば、追い込むとするか」
「ほ~ぅ? どうやって?」
「それは流石のお主にも言えぬな」
十六夜の笑みに朔耶も笑って返す。
「俺が弦に告げ口をするとでも?」
「念には念を、だ」
「告げ口したくても
俺、今の彼奴の
「
「みたいだなぁ~。
分家の奴と大喧嘩して、家出て行って
その後は店と女の所に寝泊まりしてるとか」
「……」
「俺の息子だから」
「…そう云う所は忠実に父親に似たのだな」
呆れ果てる十六夜を尻目に
朔耶は笑顔で酒を注ぎ足した。
「良くも悪くも、弦はあの頃の俺そっくりだ。
あの娘は或る意味
両親譲りの面倒見の良さだからな」
「望央の事は心配しておらんよ」
「まぁ、あの娘はなぁ…」
苦笑いを浮かべつつ酒を飲む朔耶を一瞥し
フッと十六夜は笑みを零した。
「ん? どうした?」
「互いにこの様な話で酒を酌み交わすなど…
私達も随分と歳を取ったものだな」
「…年齢の話はするなよ。
特にお前がその話題をすると
別の意味で重くなる……」
「ははは。違いない」
二人は顔を見合わせ、笑みを浮かべると
同時に視線を今宵の十六夜月へと向けた。