境内の庭先から
リョウマは無言でその烏を見つめていた。
「どうしたの、リョウマ?」
宮司の姿で境内を掃除していた望央が
その様子に気付き、声を掛けた。
『あの鳥』
「鳥?」
『2日前にも飛んでた。
その2日前も。その2日前も』
「一週間近く、
同じ烏が上空を飛んでるって事?」
『そう』
「まるで【偵察】みたいね」
『偵察。その通り。
あの烏、誰かの式神だ』
「式神…。成程ね。
烏の使い手って誰か居たかしら?」
『十六夜なら知ってるかも』
「そうね。
一度父さんに聞いてみよう」
『そう。その方が良い』
「いつもありがとうね、リョウマ!」
『望央の【兄】として、これ位当然!』
自慢気なその声と仕草に
望央は笑顔を綻ばせた。
「よぅ、お勤め御苦労さん」
戻ってきた烏に労いの声を掛ける一人の男。
濃いサングラスに無精髭を伸ばし
煙草を吸いながら、烏を式紙の姿に戻す。
「結界が堅固で式神だけじゃ中が見えんな。
宮司の神通力の高さか、それとも…」
男は口角を上げてニヒルに笑う。
「【
蓮杖神社が四神結界の一角を担っている事を
男は既に知っている。
そして、其処に住まう宮司一家。
「蓮杖 十六夜と八乙女 朔耶が
後継が誰なのかは
まだ判明してないからな。
引き続き、探る必要が有る」
彼は自身の左腰の辺りに目をやり、呟いた。
「なぁ、【