No. 009:時計の針

散文 100のお題

眠い…。
体がピクリとも動かない。

もう少し、眠っていても…良いかな?
凄く、良い匂いがするから。
安心出来る。この温もり……。

* * * * * *

自分の胸元に顔を埋めて
熟睡している弦耶を引き剥がす事も出来ず
望央は硬直していた。

「望央。そろそろ時間だが」

なかなか姿を見せない後継者を心配して
十六夜が二階の望央の部屋へとやって来る。

「ちょっ…弦。
 父さんが来ちゃうから起きて。
 ねぇ、弦ってば」

焦る望央だが、弦耶は全く起きる気配が無い。

「望央。入るぞ」

やがて、部屋の引き戸がゆっくりと開かれた。
ベッドの上の有様を
十六夜は顔色一つ変えずに見下ろしている。

「ご…御免なさい、父さん。
 直ぐに準備を……」
「望央は慌てずとも良い」
「え?」

そう言いながらも
十六夜は何かの印を結んでいる。

「父さん?」
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「ウッギャアーーーーーッ!!!」

どうやら背中に電気が流れたらしい。
弦耶は悲鳴を上げながら飛び起き
その勢いのままにベッドから転げ落ちた。

「おはよう、弦耶。
 良い夢は見られたか?」
「お…おはよ…ござ…ます……。
 夢…見れました……はい……」
「それなら良かった。
 弦耶、折角だからお前も禊に参加しなさい」
「…へ?」
「今からでも作法を覚えておかんとな」

時計の針は間も無く午前4時を指す所だ。

「私は先に行って待っておる。
 望央、弦耶。なるべく急いでな」
「はい、父さん」
「…はぁい」

『何で俺まで?』と云う
不満げな顔を向ける弦耶に対して
望央はクールにいなした。

「文句が有るなら、直接 父さんにどうぞ」
「…無理」
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お題提供:泪品切。(管理人名:yue様)