No. 007:γ線

散文 100のお題

「望央」

遠くから父の声がする。
居間だろうか?
掃除を終えた望央は足早に居間へと向かった。

「望央。
 新聞のこの文言なのだがな」
「はいはい」

父、十六夜は外来語が苦手だ。
にも関わらず、関心は高い。

「えぇ~っと、γガンマ線ね」
「何だ? 新しい路線の名前か?」
「違うわよ」
「では、何と?」
「私も詳しくは説明出来ないわ。
 理系じゃないし」
「そうか」
「文系だったからね。学校が」
「相分かった。
 その様な言葉があると云う事だけ
 覚えておくとしよう」
「うん。そうしてちょうだい」
「カマセン、だったな」
「ガ・ン・マ・せ・ん」

* * * * * *

最近、そういや踊れてない。
リズムに乗せて体を動かさないと
どうもイライラしやがる。
仕事明けにストリートで踊るのも良いが
よく職務質問を受けるのが気に掛かる。

「久々に踊りてぇなぁ」
「日舞?」
「じゃねえよ。
 てか、何で日舞が出てくる?」
「乾月流、習ってなかったっけ?」
子供ガキの頃だよ」
「一応、身には付いてるんだろ?」
「一応は…な」
何時いつ頃迄 習ってた?」
「中学に上がる前迄。
 だから…2年位、か」
「小5~6年って所か」
「あぁ」
「へぇ~」

「何だよ、急に?」
「いやぁさ、話には出てくるのよ。
 乾月さんってどんな人なのかね~って」
「何処で?」
「平家の寄り合いで」
「……」
「俺は面識無いからさ。
 ゆみちゃんが仲良しだって聞いてるけど」
「亜斗武…。
 俺の祖母バアさんに
 【弓ちゃん】はねぇだろ」
「本人がそう呼べって言ってんだし
 それで良いじゃん」
「いい歳して【弓ちゃん】はねぇよな。
 乙女か」

その直後。
棚の上に置かれていたトレイが
弦耶の頭にクリーンヒットした。

「! 痛ぇーっ!!」
「聞こえてたんじゃないの?
 弓ちゃんに」
「…そんな莫迦な」
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お題提供:泪品切。(管理人名:yue様)