No. 017:朝焼け

散文 100のお題

十六夜は境内から静かに
朝焼けを見つめていた。

「兄上…」

自身の兄、六条親王ろくじょうしんのうに語り掛ける。

「やはり、動き出しましたな」

過去の戦いを思い返す。
六条親王が最期に見せてくれた
【宿敵】の存在。
この都を脅かす【影】。

「その思惑が、百鬼夜行をこの地へと呼び寄せた」

十六夜の視線は【ことわりの森】の更に奥へと。

「あの子達を、宜しくお頼み申し上げます。
 神獣 玄武よ」

この蓮杖神社に身を隠し
都の北を守護する四神結界の要。
神獣 玄武。

淡い光がチカチカと輝いているのが
遠目からでもよく見えていた。
望央、そして弦耶を思う十六夜の
【父親】としての心情に
玄武は共鳴してくれたのだろうか。

* * * * * *

此処は何処だろう?

見た事の無い建物だらけ。
汚れた着物を身に纏った子供達が
私の周りで笑っている。

これ、多分…昔の時代、だよね?
だから見覚えの無い物ばかり。

やがて、ゆっくりと引き戸が開かれて。

「…漸く、【貴女】に辿り着きました」

逆光で顔が判らない。
旅人らしき男の人がそう言って…。

* * * * * *

「…夢、でしたわ」

望央は上体を起こすと溜息を吐いた。

「あれ、誰なんだろう?」

声しか判断出来る材料が無い。
しかし。

「肝心の【声】が
 少し不鮮明な聞こえ方してたんだよなぁ…。
 何でだろ?」

気になる夢の内容。
望央は暫く考え込んでいた。

「おい」
「今、考え中」
「禊。急がなくても良いのか?」
「?!」

いつの間にか、弦耶も起きていたらしい。

「シャワー浴びてから行くんだろ?」
「そ…そうだけど」
「俺も行くわ」
「…え?」
「汗やら何やらでドロドロだもんな。
 俺もお前もさ」

部屋に来た時と同様
慣れた姫ダッコスタイルで
弦耶は望央を抱えたまま
器用に扉を開けて浴室へと向かった。

「弦、待って!
 せめて何か着て!
 若しくは私に着せて!!」
「どうせ脱ぐんだし、要らんだろ」
「要るわよ!
 見られたらどうするの?!」
「大声出してる方が
 見られる確率高いだろうに」
「…っ!!」

結局、一糸纏わぬ姿で
二人は浴室へと向かうのだった。
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お題提供:泪品切。(管理人名:yue様)