丈の願い・美雨の願い

惑星の行く末編・1

ねぇ、丈。

貴方の願いは…この惑星ほしを守る事、だったわよね?
この惑星に住まう全ての生命を守りたい、と。
失われた力を在るべき場所へ返す、と。

貴方の願いは叶ったわ。
惑星は力を取り戻し
生命の絆は未来へと繋がっていくでしょう。

…でもね、丈。

私の願いは叶わなかった。
もう一度貴方と、皆と一緒に世界中を旅する事。

皮肉な話よね。
私達は旅立つの。貴方抜きで。
本来なら喜ぶべき事の筈なのに…
此処に、貴方だけが居ない。

誰かの願いが叶っても…
同時に、別の誰かの願いは叶わない事が有るって…
そんな、当たり前の事を……
私、今迄 全然気が付かなかったよ……。

* * * * * *

人類は長きに渡るパラサイダーとの戦いに勝利した。

だが、皮肉にも
最も敵兵を屠ったのは
嘗てパラサイダー軍最強最悪と呼ばれた男、スペードだった。

力尽き、所々食い千切られた五体を
地面に仰向けに横たわらせ
彼は静かに息を引き取っていた。

満足気なその死に顔に
ウムラウトは最敬礼で答える。

「出会いが違えば
 良き好敵手ライバルになれただろう。
 私は忘れない。
 お前の事を。…スペード」

彼はスペードの遺体を荼毘に付した。
野晒しにする事も出来たし
少なくとも、それを望む者達も存在していた。
しかし、ウムラウトはその声を制し、説得した。

「苦しみ、憎しみの連鎖を断ち切る時が来たのだ。
 子の為、孫の為、この惑星で生きていく者として」

その為の戦いだったのだ、と。
ウムラウトの言葉は多くの人々の心を突き動かした。

『そうだろう、丈?』

光を指示してくれた友人へのメッセージ。
彼は、受け取ってくれただろうか。
そんな事を思いながら、ウムラウトは青空を見上げた。
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