貴方の願いは…この惑星を守る事、だったわよね?
この惑星に住まう全ての生命を守りたい、と。
失われた力を在るべき場所へ返す、と。
貴方の願いは叶ったわ。
惑星は力を取り戻し
生命の絆は未来へと繋がっていくでしょう。
…でもね、丈。
私の願いは叶わなかった。
もう一度貴方と、皆と一緒に世界中を旅する事。
皮肉な話よね。
私達は旅立つの。貴方抜きで。
本来なら喜ぶべき事の筈なのに…
此処に、貴方だけが居ない。
誰かの願いが叶っても…
同時に、別の誰かの願いは叶わない事が有るって…
そんな、当たり前の事を……
私、今迄 全然気が付かなかったよ……。
人類は長きに渡るパラサイダーとの戦いに勝利した。
だが、皮肉にも
最も敵兵を屠ったのは
嘗てパラサイダー軍最強最悪と呼ばれた男、スペードだった。
力尽き、所々食い千切られた五体を
地面に仰向けに横たわらせ
彼は静かに息を引き取っていた。
満足気なその死に顔に
ウムラウトは最敬礼で答える。
「出会いが違えば
良き好敵手になれただろう。
私は忘れない。
お前の事を。…スペード」
彼はスペードの遺体を荼毘に付した。
野晒しにする事も出来たし
少なくとも、それを望む者達も存在していた。
しかし、ウムラウトはその声を制し、説得した。
「苦しみ、憎しみの連鎖を断ち切る時が来たのだ。
子の為、孫の為、この惑星で生きていく者として」
その為の戦いだったのだ、と。
ウムラウトの言葉は多くの人々の心を突き動かした。
『そうだろう、丈?』
光を指示してくれた友人へのメッセージ。
彼は、受け取ってくれただろうか。
そんな事を思いながら、ウムラウトは青空を見上げた。