丈の願い・3

最終血戦編・20

球体はゆっくりと
吸い込まれる様に
崩落した跡地、
其処に出来た巨大な穴へと向かっていく。

『エネルギー体が…
 惑星ほしと一体化していく…』

モニター画面で確認しているのだろう。
漣は涙声になっていた。
轟も又 嗚咽を漏らしている。

「丈…」

本来なら、自分が背負う筈だった【生贄サクリファイス】の任。
何も言わず、それを引き受けてしまった丈。
彼が残した最期の微笑みを思い出すと
涙が溢れて止まらなくなる。

「生きて、ください」
「…セカンド?」
「それが丈様の…兄の、願いです」
「丈の…?」
「はい」
『ならば、俺達の願いは…』

疾風の声が響く。

『セカンド。
 丈の弟であるお前が、生き残る事だ』
「疾風?」
『この悲劇の生き証人として。
 そして、パラサイダーの戦士の生き残りとして。
 勝手に死ぬ事は許されない。
 …解るよな?』
「…そうだな。その通りだ」

クラブは笑っている。
その笑みを見ていれば、解る。
彼は生き続けるだろう。
どんな苦難がこの先待ち受けていようとも。

「ねぇ、セカンド。
 もし良かったら私達と…」

美雨はそう言い掛けたが
クラブは人差し指で彼女の唇を封じると
静かに首を横に振った。

『漢の矜持だ。
 認めてやれ。
 そして、信じてやれ』
「…そうね、兄さん。
 私、信じるわ。
 又 こうして貴方と再会出来る事を」
「えぇ。私も。
 それ迄お元気で、美雨」

クラブは静かにその場を去って行く。
彼の背中が段々小さくなり
やがて視界から消え去ってしまう迄
美雨はずっと、その後姿を見送っていた。
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