レジスタンス

異世界編・1-1

「う…ん」

丈は漸く目を覚ました。

車酔いした様な感覚。
思わず吐きそうになり
慌てて口を手で押さえる。

「…此処は?」

見覚えの無い部屋。
無機質な空間。
ベッドの傍にはテレビ。
いや、モニターか。

どうやら個室の様だが
少なくても自分の居た世界では
見た事が無い。

「まるでSF映画に出てくる部屋だな」

そう言って、彼は漸く思い出した。

「そうか…俺は…」

時空間転移したのだ。

疾風と共に、
自分が生まれ育った時と場所から逃げた。
逃げざるを得なかった、と言っても良い。

「此処が…彼の故郷、か」

重い頭を振り、
彼は何とか自分の足で立ち上がる。

重力は同じに感じる。

「体…重い」

ダルさがまだ残っている。
熱も多少あるらしい。
フラフラする。

丈は思わずベッドに倒れ込んだ。

「ハヤ…テ…さ……」

薄れ行く意識の中で
彼は確かにそう呼んだ。

* * * * * *

額がひんやりする。
風邪を引いた時、
よく父が氷嚢を当ててくれたっけ。
ふとそんな事を思いながら目を開ける。

「疾風…さん…」

其処に居たのは疾風だった。
優しそうな微笑を浮かべて。

「よく頑張ったな、丈」
「…必死だった」
「そりゃそうだろう」

起き上がろうとしたら
そのまま抱き締められた。

「まだ無理するな。
 熱が出ている」
「ん…」

言葉に従い、静かに横になる。
何度も頭を撫でられると
不思議と昔を思い出す。

昔、自分が子供だった頃。
それより過去の事は、
まだ思い出せない。

「此処が、俺達のアジトだ」
「アジト…?」
「お前の居た時代より凡そ50年後。
 此処は50年後の日本だ」
「50年…」

「俺達は【パラサイダー】と云う
 連中と交戦中だ。
 奴等は人間を襲い、食らう。
 奴等の所為で…大分人間も減ったよ」
「【パラサイダー】…。
 そいつ等が…?」
「そう。お前を襲ったのも
 パラサイダーだ」

「俺を…【鍵】だと言った。
 それはどう云う…」

其処まで言って
再び激しい眩暈に襲われる。
嘔吐感も強い。

「まだ体が万全じゃない。
 今はゆっくり休め」
「…あぁ、解った」

聞きたい事は山程有るのに
体が思う様に動かない。
多少の苛立ちが彼に残った。
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