父との再会

異世界編・1-11

「そうそう。
 団長が君を呼んでたんだ」
「団長?」
「此処のレジスタンスを立ち上げたリーダー。
 僕達は団長に命を救われて
 一緒に戦う様になったんだ」
「へぇ~、強いんだね。その人」
「…君の良く知っている人なんだけど」
「?」
「百聞は一見にしかず。
 実際に会ってみなよ」

丈の腕を取り、
漣は無邪気に引っ張った。

「い、痛いよ! 漣さんっ!!」

丈の悲鳴も聞こえてないのか、
漣も何処か嬉しそうだった。

* * * * * *

会議室と呼ぶには余りにも無機質な部屋。
その奥でモニターに目をやる一人の男。

後姿を見ただけで
丈は思わず息を呑んだ。

「…親父?」

そう、それは紛れもなく恵一だった。

自分の知る研究者、恵一とは
余りにもかけ離れたその姿。

別人の様な父の姿に
丈は知らず知らず緊張していた。
父だと解っていても怖かった。

「目が覚めた様だな、丈」
「…親父が、レジスタンスのリーダー?」
「まぁ、成り行き上だ」
「…どう云う、意味なんだ?」

「私は元々この時代の人間だ」

衝撃の事実だった。
初めて知る真実。

父が何を言っているのか、
丈には理解出来なかった。
そして、理解したくも無かった。

「この時代の…?」
「あぁ、この時代に生まれ、育った。
 そして物心付いた時には
 パラサイダーと戦っていた。
 そんな最中、彼等 亜種人類と出会って
 レジスタンスを結成したのだ」
「……」

「前のアジトを強襲された際、
 私は時空間転移で
 お前の生まれた70年前の時代に移動した。
 其処でお前の母と知り合い、恋に落ちた」
「俺は…」
「そう。お前は70年の偶然が生み出した子供だ」

「パラサイダーはその事…」
「何らかの偶然で知り得たのだろう。
 お前の実の母はお前を産んで直ぐに死んだ。
 再婚した新しい母に、お前は良く懐いていたな」

「俺が聞きたいのはそんな事じゃない」

俯きながらも丈の声は怒気が含まれていた。
心優しい彼には不釣合いな、低い声で。

* * * * * *

「どうした、丈?」
「何故母さんと結婚した?
 違う時代の人間だと解ってて…。
 そして何故再婚した?
 パラサイダーに狙われていると解っていて…」
「丈…」

「答えろよ、親父…」
「……」

「母さんと昭美は殺された。
俺の所為で、二人は死んだ。
いや、二人じゃない。三人だ」
「丈…」
「俺は二人の母親と妹を殺した。
 そうだ、俺の所為で三人は…」
「違う。違うんだ、丈…」

「アンタはそれで良かったかも知れない!
 でもあの時代の人間は無関係の筈だろう?
 なぜ死に追いやる様な真似をしたっ?!」

激昂していた。
怒りでおかしくなりそうだった。
其処に穏やかで素直な丈は居ない。

母と妹の無残な姿が脳裏に蘇る。
その原因が…。

「俺が生まれて来たからだろう?」
「丈…」
「何故俺なんかを産んだんだッ?!」

丈はそう叫ぶと会議室を飛び出した。

「丈!」
「追うな、漣!」
「でも…」
「解っている。
 あの子は頭の良い子だ。
 直ぐに冷静になってくれるさ」
「なら、良いんですけど…」

漣は心配そうに恵一を見つめた。
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