青白い顔で唸っている。
かなりの疲労が体を襲うのか。
それとも、別の要因か。
「丈…?」
心配そうに顔を覗き込む疾風に対し、
丈は一言
「頭が痛い…」
と告げた。
「頭痛が要因か…?」
熱を抑える薬も、頭痛を抑える薬も
此処には揃っていない。
どうするべきかと疾風は思案していた。
「苦しいか?」
「いや…大丈夫…」
意識が朦朧とし、
視線さえも定まらない状態で
それでも丈は笑って見せた。
「…強がるな」
それは誰に向けた言葉なのか。
大きな掌をそっと額に当て
疾風はそっと呟いた。
熱は依然下がらない。
苦しそうな息使い。
体力の消耗故か、
丈はやがて眠りに付いていた。
その傍でじっと彼を見つめる疾風。
「この痣…」
初めて会った時から気になっていた。
首を一周する赤い痣。
何を意味しているのかは解らないが
これも熱の原因なのか。
「せめてお前に何が遭ったか、
それだけでも知りたい…」
何時から付いた痣なのか。
それが何を意味するのか。
疾風は知りたかった。
例え彼がその事実を知らないとしても。
「疾風?」
部屋に誰かが入って来た。
漣だ。
「様子は?」
「相変わらずだ。
熱も引かない」
「眠ったまま?」
「あぁ…」
「もう一度体温測ろうか」
メディカルセットを取り出し、
漣は丈の体を調べ始める。
「…ふぅ。
表立っての異常は見受けられないよ。
さっきと一緒。
倒れる前と変化無し」
「…そうか」
「この地が彼に適してない…って
訳でも無さそうだし」
「それなら顕著に変化が現れる筈だよな」
「当然」
「それも無い…」
「正直、お手上げだよ…。
手の施し様が無い」
「……」
「疾風?」
「漣、お前…どう思う?」
「何が?」
「彼のこの首の痣」
「異常な痣だね。
綺麗に首を一周してる。
まるで…」
そう言い掛け、漣は口を閉ざした。
「どうした?」
「…何でもないよ」
「言えよ」
「…怒らないでよ」
「怒る訳無いだろ?」
「あくまでも仮説だよ。
…綺麗過ぎるんだ、この痣。
まるで切断された後の様に」
「切断…?」
「あくまでも仮説だからね…」
「…当たりかもな、それ」
「疾風?」
「彼は三つ目の亜種だった。
三つ目はこの世に彼一人。
それ故にいつも狙われていた…」
過去に思いを巡らし、
疾風は溜息を吐いた。
「過去の遺恨か。この痣は…」
そっと彼の首の痣を撫で、
疾風は言葉を発した。