理 解

異世界編・1-9

「疾風」

ふと声が聞こえる。

「…轟か」
「あぁ。団長がお呼びだ」
「はいよ」

轟は何故か嬉しそうに
疾風の顔を見ては微笑んでいる。

「何だよ?」
「いや、お前は良いよな。
 其処まで愛せる人が居てさ」

羨ましい、と轟は呟いた。

「団長が居るだろう?」
「あの人は尊敬する人。
 お前が彼を想う気持ちとは違う」
「…そうか」

疾風は軽く頷くと言葉を続ける。

「Gは取り戻したんだろ?」
「あぁ。だが占領地はまだ星の数程有る」
「拠点を潰していくしかないか」
「その為の会議だったんだが…」
「概要を聞けば動ける」
「それがお前だからな」

轟はどちらかと云えば
不器用なタイプである。
頭で色々考えるよりも
的確な指示をくれればそれに十二分に答える。
それが彼の恵一への忠誠心の表れでもあり、
恵一自身も気に入っている部分だ。

恵一は部下の性格をよく理解している。
疾風はそう感じ取っていた。
自分はよく会議をサボるが
怒られた事は一度も無い。
要点さえ掴めば動ける。
そんな彼の性格を恵一は了承しているのだ。

昔居た集団よりも余程居心地が良かった。
上から物を言われるのは性に合わない。
そんな疾風は何処に居ても
お荷物扱いだったからこそ
その手綱は恵一しか握れない。

実に巧く出来た集団だと思う。
少人数ながら、
完成された集団。
それがこのレジスタンスだった。

「行こうか」

疾風の言葉に轟が大きく頷く。
2人は揃って会議室へと向かった。

* * * * * *

漣は丈の様子を見ている。
熱を測るが、平熱だった。
どうやら峠は完全に越えた様だ。

「不思議な子だな、全く。
 これで僕達よりも年上…か」

この世界で20歳まで生きられる者はそう居ない。
その上でも丈は特別な存在だった。

「幸せそうな顔で寝ちゃって…。
 本当、幼いよね。
 疾風じゃなくても可愛く思うよ」

漣はそっと丈の寝顔を覗き込んだ。

長い睫が少女の様にも見えた。
穏やかな寝息が聞こえてくる。

「お休み、丈…。
 良い夢を見なよ……」

漣は様子を一通り診終わると
静かに部屋を後にした。

そして、丈は何も知らず
ゆっくりと眠っていた。
安心して、グッスリと。
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SITE UP・2005.2.28 ©森本 樹

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