外 界

パラサイダー編・1

「外へ?」

疾風の問いに、丈は黙って頷いた。

「あぁ。俺、この世界の事知らないし。
 一度見てみたいんだ」
「それは構わないが…」
「勿論一人でなんて言わない。
 その…」
「解ってる。
 俺がついててやる」
「御免」
「言うな」

優しく頭を押さえ込み、疾風は微笑んだ。

「行くか」
「うん」

二人はそう言うと静かに外界へと向かった。

* * * * * *

「セイリュウの反応です」

クラブの報告に、総帥は頷いた。

「スザクは」
「一緒ですね」
「やはりそうか」
「どうしますか?」
「手下を数名連れて行け。
 弾丸に強いタイプをだ」
「…セイリュウ封じですか」
「そうだ。スザクを手に入れろ」

「セイリュウは?」
「ふ…。今は興味ない。
 お前はどうだ、クラブ?」
「殺り合うにはまだ早いですね」
「だろう。なら、捨て置け」
「了解しました」

クラブは意見に賛同して貰えて嬉しいのか、
サングラスを外した。

其処にある筈の【目】が無い。

「そんなに嬉しいか、クラブ?」
「嬉しいですね。
 貴方の意思に副える事は
 我が最大の喜び」
「世辞を言わんお前を
 私も気に入ってるよ、クラブ」

クラブは満足そうに微笑み、
再びサングラスを掛ける。

「この醜い顔を晒せるのは
 貴方にだけです、総帥」

深々と一礼し、
クラブは部屋を後にした。

「…久々に本気だな、アレも」

総帥はそう言うと
モニターに映る丈の横顔を見つめた。

* * * * * *

「丈は?」

恵一は異変に気付き、
轟と漣に所在を聞いた。

「確か疾風と一緒に居た筈ですが…」
「でも疾風も居ないよね?」
「まさか…外じゃあるまいな」
「外へ? 無茶なっ?!」

突然、漣が素っ頓狂な声を上げた。

「どうしたんだよ、一体?」
「丈の体はまだ完治してないんだよ?
 それに外は空気も悪いし…。
 彼、脳に欠陥が有るって説明したろ?」
「あぁ…。でも…」
「外は悪質なノイズが山程流れてるんだ!
 見えないだけに厄介なんだよっ!!」
「お。落ち着け…漣……」

「いや、問題はそうじゃない」
「え?」
「パラサイダーの動きがおかしい。
 丈にまだ実戦は早い。
 変な騒ぎに巻き込まれない様にと
 釘を指すつもりだったんだが…」
「団長…」

「…まぁ、疾風が一緒なら大丈夫だろう。
 漣、丈の武器の方は?」
「七割方完成してます。
 テストしてみたいんですが、
 丈があの状態じゃ…」
「…そうか。済まないな」

恵一は優しく漣の髪を撫でてやる。
不安げな表情が一瞬だけ和らいだ。

「何事も無ければ良いんですがね…」

事の重大さを認識してか、
轟も重い口を開いた。
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