強襲・2

パラサイダー編・3

「団長!」

突然、漣が叫びをあげた。

「どうした?」
「丈の、…丈の生体反応が」
「どうしたって言うんだよ、漣っ?!」

耐え切れず轟が声を荒げる。

「…どうした?」
「反応が、消えました…」
「何だってっ?!
 一体どう言う事だ、漣?
 お前の機械のエラーじゃねぇのか?」

掴みかからんばかりの轟を恵一が止める。

「団長…」
「消えたんだな、突然」
「はい…」
「なら、サーチ範囲外に移動した可能性も有る。
 …拉致されたか」
「団長…」
「疾風に詳しく聞こう。
 彼は傍に居た筈だ」
「解りました…」

「何だよ、疾風の奴。
 『自分が守る』って
 大見得切ってこの様じゃ…」
「言うな、轟。疾風の事だ。
 余程の事情が遭ったのだろう。
 幹部クラスが動いた可能性だってある」
「幹部…ですか」
「この鮮やかさ、雑魚では不可能だ」
「…そうですね」
「余り疾風を責めてやるな」
「はい…」
「団長…」
「漣は引き続き反応を確認してくれ。
 …頼むぞ」
「解りました」

恵一はそう言付けると
自室へと向かった。

「団長、無理しちゃって…」
「本当だな。
 自分の息子が行方不明だというのに
 あの人は俺達を気遣ってくれる…」
 「団長の為にも頑張らないとね、轟」
「あぁ…」

二人は決意も新たに丈の行方を追った。

* * * * * *

高濃度の酸素が詰まった巨大なカプセルの中で
丈は静かに眠っていた。

体には色々なコードが付けられており、
それらから発される情報が
モニターに逐一報告される。

「やはり、な」

総帥は静かに頷いた。

「簡易型で時を渡ったショック。
 そして未覚醒のまま力を放出した反動。
 これらが脳に影響を与えたか」

データを読み取り、
彼の指がキーボード上で軽やかに動く。

「…さて」

一通り何かを打ち終わると
総帥の目は丈に向けられた。

正確には丈の【額】に、だ。

ゆっくりと額に縦の光が走る。
そして…。

「やぁ…」

懐かしむ様に総帥が声を掛けた。

其処に現われたのは赤い瞳。
丈の額に瞳が現れたのである。

「漸く解放出来たな…」

瞳からはまるで血の様に
赤い液体が流れ出していた。
涙の様にそれは流れ落ちる。

「…解っている」
総帥はそう言うと
更にキーボードに指を走らせた。

モニターに幾つもの映像が
浮かんでは消えていく。
正に神業の速さで
総帥の指は音を奏でていた。
カタカタと云う無機質な音を。

丈は静かに両目を閉じ
何事も感じない様に眠っていた。
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