初 陣

異世界編・2-3

「パラサイダーの動きは?」

恵一が漣に問う。

「…此方に一部隊移動して来てます。
 四天王の反応は有りませんね」
「様子見か?」
「多分…」

「そろそろだな」
「?」

恵一はそのままマイクに向かう。

「疾風、轟、丈。
 パラサイダーを迎撃する。
 地点はN-1・2地区」

『了解』

代表して疾風の声が聞こえて来た。

「丈の服は?」
「テクノライト素材の物に着替えてもらってます。
 以前着ていたあの白い衣装、
 もう少し調べたいんですが」
「パラサイダーの戦闘服、だったな」
「えぇ。あれもテクノライト素材なのかどうか…」
「解った。漣は解析を頼む」

恵一はそう言うと素早くレーザーライフルを取り出した。

これ一丁で此処まで来た男。
パラサイダーが恐れる
唯、一人の人間。

「行くぞ」

作戦室に揃った3人を引き連れ、
恵一はN-1地点を目指した。

* * * * * *

心は不思議と穏やかだった。
もっと恐怖に囚われるかと思っていたが。
丈は普段と変わらない
澄んだ目で前方を見つめる。

「あれ…か」
「そうだ」

答えたのは父、恵一だった。

「正面は私と丈で叩く。
 疾風と轟は散開して挟み込め。
 四天王は来ていない」
「了解」
「解りました」
「…はい」

四天王。

丈はスペードの顔を思い出していた。

執着心の深い男。
いずれ対決しなければならない、相手。

「四天王…」

丈の呟きを恵一は聞かない振りで済ませた。

* * * * * *

「来るぞ」

恵一の声に丈は微かな頷きを示した。

『鞘は君自身の体』

漣の言葉が蘇る。
丈は念じた。

「…俺の武器。
 俺の…五鈷杵…」

彼の胸が紅く輝き始める。
そしてその光の輪からゆっくりと
五鈷杵が姿を現し、
彼の右腕に納まった。

剣先が焔を纏い、
眩しく輝いている。

「やはり剣か…」

恵一は感慨深く呟いた。

五鈷杵は持ち主に合わせて変化する。
丈にとって一番合っているのは
細身の片手剣だったのだ。

「…軽い」

右手にフィットした五鈷杵はとても軽く
丈の腕に何の負担もかけない。

「…俺、戦う。逃げないよ…」

真っ直ぐに前を見つめ、
丈は剣を構えた。

左右では疾風と轟が五鈷杵を取り出し、
既に乱戦が開始されていた。
初陣の丈の為に
少しでも手数を減らそうと云う
先輩戦士の優しさだった。

「行くぞ、丈!」
「はいっ!!」

二人はパラサイダーの集団へ突入を開始した。

何も恐れない。
それが今の丈だった。

大地を蹴り、真っ直ぐに駆け出し
滑らかな動きでパラサイダーを斬って行った。
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