観 察

異世界編・2-4

「スザク出陣か」

満足そうな笑みを浮かべ、
総帥はスクリーン上のレジスタンスを見つめていた。

滑らかな動きでパラサイダーを仕留める丈。
まるで飛んでいるかの様な身のこなし。

「火の鳥…だな」

嬉しそうに画面の丈に声を掛ける。
その瞳は優しい。

「スザク…。漸く目覚めたか」

待ち望んだ瞬間だった。
大空に羽ばたく戦士を。

「もっとだ。もっと強くなれ」

スクリーンは何時しか
丈だけを映していた。

* * * * * *

透明な剣先に自分の顔が映っている。
改めて五鈷杵を見つめると
眩しく七色に輝いていた。

「不思議な金属…だな」

丈は感心しながら五鈷杵を見つめていた。

戦闘は一段落し、
パラサイダーを全滅させる事が出来た。

「初陣にしては、なかなかだな」

轟に褒められ、丈は年甲斐もなく照れた。

「四天王が出て来なかったのも幸いしたな」
「そんなに強いんですか?」
「…疾風や轟と五分だ」
「…そんなに、強いんだ」

二人の強さはこの戦いで実感した。
四天王はその力を有している。

「何時か、戦うべき…敵」
「そうだ」

恵一はそう言うとアジトに目を移した。

「帰るか。漣が待っている」
「はい」

全員がアジトに向かおうとした時。

「?」
「どうした、丈?」

疾風が呼び掛けると
丈は一点を訝しげに見つめていた。

「何か感じるのか?」
「誰かに見られてる気がする…」
「又か…」
「?」
「いや、こっちの話」

丈には不思議な力がある。
パラサイダーを感知する力。

「見られていたのかもな…」

疾風はそう言うと五鈷杵を体内に納めた。

* * * * * *

「ふ…」

スクリーンを見ながら
総帥は満足そうに頷いた。

「感知能力も桁外れだな。
 流石…と云うか」

スザク=丈の能力の高さは認めていた。
元々、彼の潜在能力を開花させたのは
他ならぬ自分なのだから。

「だが…」

総帥はコートを翻し、
スクリーンを背に立ち上がった。

「この程度で満足してもらっては困る」

その目は温和なものから鋭いものへと
変化していた。

「雑兵如き、幾らでも湧いて出る。
 もっと力をつけろ、スザクよ。
 そして早く我が元へ…」

総帥は待っているのだ。
戦士として成長した丈が
自分の前に現われる瞬間を。

何故…。

それは総帥にしか解らない。

「早く…早く成長するのだ。
 誰よりも強く、
 誰よりも羽ばたけ、火の鳥よ…」

スクリーンに映る丈の横顔。
再び画面を見る総帥の目は
また穏やかなものに変わっていた。
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