戦士達

異世界編・2-7

「今日は薄曇か」

パトロールの最中
空を見上げ、丈が呟く。
何処かウズウズしている。

「丈」
「何?」
「上空の探索を頼む」

「それって…
 『飛んで良い』って事っ?!」
「あぁ」
「疾風!」

丈は嬉しそうに疾風にキスを送り
真紅の翼を呼び出した。

「じゃあ見てくる!」
「行って来い」
「うん!」

上空に向け、猛スピードで
丈は駆け出して行った。

「本当に…昔から
 『飛ぶ』事の好きな奴だ…」

嬉しそうにその姿を見つめる疾風の
両眼はとても優しげだった。

* * * * * *

久しぶりの風を全身で感じる。
この快感は言葉に表現出来ない。
自在に空を舞い、
暫くして漸く丈は自分の任務を思い出す。

「いけね! パトロール中だった!!」
「もう忘れてるのか。困った奴だ…」
「疾風…」
「空は良い。何の束縛も受けない」

優雅に羽ばたく漆黒の翼。
疾風にはピッタリの翼だ。

「例え薄曇の空でも
 …俺はこの風景を愛している」
「…そうなんだ」
「俺の故郷、だからな。
 この時代、この場所は…」
「故郷…」

丈は柔らかな微笑を浮かべる。

「俺にとっても故郷だよ。
 この場所は…」
「丈…」

「お~い!!」

下から誰かが二人を呼ぶ。

見事な白い虎に跨った漣だった。

「良いよなぁ~。
 そっちは空を飛べてさ!!」
「オ前ハ俺ノ上デ
 楽シテルジャネェカ!!」
「と、轟……」
「振リ落トスゾ!」
「ご、御免!!」

明るい笑い声が木霊する。
丈と疾風も地上に降り、
4人は一頻り笑った。

* * * * * *

明るい笑い声が聞こえてくる。
誰も居ない筈のこの森にも。

「丈、笑ってる…」

タバサは丈の心を通じて
彼等の事を知っている。

「良いなぁ…仲間」

丈の明るい笑い声が
彼の心の輝きが
伝わってくる。

「何だか私も嬉しいな…」

タバサはそっと立ち上がり、
空を見上げた。

「貴方達が何時までも笑っていられる様に。
 その笑みを絶やさない様に。
 私、この歌を捧げるわ…」

タバサは歌い始めた。
伸びやかな声で。
戦士達の心を癒す為に。

* * * * * *

「タバサ?」
「えっ?」
「タバサの歌だ…」

丈は上空を見上げた。
そして彼女の歌に合わせ、自身も口ずさむ。
そのメロディを。

「懐かしい感じがする…」
「知ってる感じがするな、それ…」

「この歌は…『再生』」
「知ってるのか、疾風?」
「あぁ…。覚えてないか?」

「美雨の…祈りの歌?」
「そうだ」
「じゃあ何故その…
 タバサって子が?」
「さぁな…」

『再生』を口ずさむ丈の姿を
疾風は煙草を咥えながら、
眩しそうに見つめていた。
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