肉体改造でも施したのか、
確かに以前の彼とは違う。
丈は五鈷杵を握り締め、
何とか反撃の糸口を探していた。
『やっぱりコイツ、
悔しいけど強い…』
素直に相手の強さを認める事が出来る様になっていた。
だからこそ
彼も今以上に成長を促す事が出来る。
美雨の事が気に掛かっていたが
幸いにもスペードは丈の事にのみ集中している様だ。
彼女は自分自身を守る事位なら出来ると言っていたが
それは出任せではなく、
確かに何かの磁場が発生し
彼女自身をパラサイダー達から遠ざけていた。
巫女としての底知れぬ力の一片を
此処に見た様な気がした。
「埒が明かんな」
そう呟いたのはクラブだった。
流石にレジスタンスが揃うと強い。
四天王と匹敵するか、それ以上の能力の持ち主。
そして…四天王には無い
『団結力』や『連携』を得意とする集団。
「スザク…か」
丈が戦場に現れてから、その一体感は一層増した。
間違いなく、丈が世界を変えている。
流石に銃撃に対しては疾風も隙が無い。
このまま撃ち合いを展開しても
弾切れを起こす可能性が高いのは
寧ろ自分の方であろう。
『美雨を奪えないとなっては
此処に来た意味が無くなる。
だが、スペードもダイヤも
今は冷静さを失っている。
さて、どうしたものか…』
「随分余裕を見せてくれるじゃねぇか!」
疾風の怒号にクラブは薄い笑みを浮かべる。
「いや…ギリギリだよ」
「何だと…?」
「毎度お前達には驚かされる。
全く、大した逸材だ」
疾風もクラブがどう云う男かは知っているつもりだ。
だからこそ、世辞を言う様なタイプでは無い事も
十分理解している。
「何を企んでいる、クラブ…?」
「さて、ね…」
腹の探り合いが続く。
『どんな事が起ころうとも…
俺は俺の戦いを貫く』
疾風の心は決まっていた。
そして、クラブもまた。
『スペード』
不意に脳裏を過ぎる声。
総帥からの命令だった。
『命令を遂行せよ』
「…御意」
スペードは静かに頷くと
鎌を鋭い剣状へと変化させた。
「…えっ?」
突然の事に、一瞬だが丈の動作が遅れる。
『レジスタンスの柱を破壊せよ』
スペードにのみ命じられた指示。
紅く血走った瞳が
美雨ではない別の存在を映す。
「丈っ!!」
先にスペードの狙いを察知したのは美雨だった。
慌てて結界を張ろうとするが
雑兵の気配を察知している以上
思った様に集中出来ない。
美雨の声に反応し、丈は真っ直ぐスペードを追った。
しかし。
「!!」
その瞬間、声が失われた。