絶 命

タバサ編・14

スペードの攻撃は破壊力が上がっていた。

肉体改造でも施したのか、
確かに以前の彼とは違う。
丈は五鈷杵を握り締め、
何とか反撃の糸口を探していた。

『やっぱりコイツ、
 悔しいけど強い…』

素直に相手の強さを認める事が出来る様になっていた。
だからこそ
彼も今以上に成長を促す事が出来る。

美雨の事が気に掛かっていたが
幸いにもスペードは丈の事にのみ集中している様だ。

彼女は自分自身を守る事位なら出来ると言っていたが
それは出任せではなく、
確かに何かの磁場が発生し
彼女自身をパラサイダー達から遠ざけていた。

巫女としての底知れぬ力の一片を
此処に見た様な気がした。

* * * * * *

「埒が明かんな」

そう呟いたのはクラブだった。

流石にレジスタンスが揃うと強い。
四天王と匹敵するか、それ以上の能力の持ち主。
そして…四天王には無い
『団結力』や『連携』を得意とする集団。

「スザク…か」

丈が戦場に現れてから、その一体感は一層増した。
間違いなく、丈が世界を変えている。

流石に銃撃に対しては疾風も隙が無い。
このまま撃ち合いを展開しても
弾切れを起こす可能性が高いのは
寧ろ自分の方であろう。

『美雨を奪えないとなっては
 此処に来た意味が無くなる。
 だが、スペードもダイヤも
 今は冷静さを失っている。
 さて、どうしたものか…』

「随分余裕を見せてくれるじゃねぇか!」

疾風の怒号にクラブは薄い笑みを浮かべる。

「いや…ギリギリだよ」
「何だと…?」
「毎度お前達には驚かされる。
 全く、大した逸材だ」

疾風もクラブがどう云う男かは知っているつもりだ。
だからこそ、世辞を言う様なタイプでは無い事も
十分理解している。

「何を企んでいる、クラブ…?」
「さて、ね…」

腹の探り合いが続く。

『どんな事が起ころうとも…
 俺は俺の戦いを貫く』

疾風の心は決まっていた。

そして、クラブもまた。

* * * * * *

『スペード』

不意に脳裏を過ぎる声。
総帥からの命令だった。

『命令を遂行せよ』
「…御意」

スペードは静かに頷くと
鎌を鋭い剣状へと変化させた。

「…えっ?」

突然の事に、一瞬だが丈の動作が遅れる。

『レジスタンスの柱を破壊せよ』

スペードにのみ命じられた指示。

紅く血走った瞳が
美雨ではない別の存在を映す。

「丈っ!!」

先にスペードの狙いを察知したのは美雨だった。

慌てて結界を張ろうとするが
雑兵の気配を察知している以上
思った様に集中出来ない。

美雨の声に反応し、丈は真っ直ぐスペードを追った。

しかし。

「!!」

その瞬間、声が失われた。
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