新生・レジスタンス

セルファーに入ろうとした時に
先程の無理が体を襲った。
目が眩み、そのまま床に倒れ込んでしまう。

「…俺が、しっかりしないと。
 こんなんじゃ……」

立ち上がろうと手に力を篭めるが
それすらも困難な状態。

このダメージは決して傷の所為だけではない。
だが、丈はそれすらも認めなかった。

「俺がこんな調子じゃ…
 皆が心配、するだろう…?」

意識が薄らいでいく。
何とか体を動かし、丈はセルファーに入り込んだ。

* * * * * *

「漣、轟…」

疾風は意を決して会議室に足を踏み入れた。

さぞかし落ち込んでいるだろう仲間に
声を掛ける為に。

だが、いざ扉を開けてみると
2人は泣いてなどいなかった。
静かに笑みを浮かべ、何やら話し込んでいる。

「…遅かったな」

轟の言葉に、今度は疾風が眉を顰めた。

「遅い?」
「そうだよ、団長!」
「…団長? 俺が?」

疾風がレジスタンスに参加したのは
この3人の中で一番最後である。
自分が後継者など、まるで頭に無かった。

順番で行けば漣か、
もしくは恵一の一人息子である丈が妥当だ。

「お前が一番相応しいんだよ。
 丈には枷を与えたくないし」
「轟……」
「僕や轟は人の上に建つ器じゃないよ。
 それにね、団長と約束してたんだ。
 不測の事態に備えて、
 後継者は『疾風』にするって」

遥か昔。

やはり、同じ様な事が起こった。
それは結果として自分や仲間達には
嬉しくないものとなった。

だが、今回は違う。
仲間達が認めてくれているのだ。
誰よりも、自分の事を。

「お前はお前のカラーで攻めて行けば良い。
 俺達はお前に従う」

轟はそう言うと、右手を差し出した。

「運命共同体だからね、僕達は」

同じく、漣。

「…解った。
後任、確かに俺が引き受ける」

疾風も決意した様だ。

その言葉は誰よりも恵一に向けられていた。

「団長…。必ず俺達が悲願を果たします」

満足げな恵一の横顔に、疾風は静かに誓った。

* * * * * *

『俺に何が出来たんだろう…?』

セルファーの中。
羊水に漂うイメージの中で
丈は激しく自問自答していた。

『この世でただ一人の三つ目。
 そう呼ばれているものの、
 俺には何の力も無い。
 誰も、満足に守れない…』

過信している訳では無い筈だが、
それでも彼にとっては許しがたかった。

『…貴方の夢を、
 今度こそ…叶えなさい』
「誰だ?」

また、『あの声』だ。
美雨とは違う、女性の声。

『貴方の本当の夢を…』
「俺の、本当の…夢?」
『そして思い出しなさい。
 全ての鍵は、貴方自身に……』
「全ての、鍵?」

丈の意識が少しずつ鮮明になっていく。
セルファーでの治癒時間が終了に近付いてきていた。