動き出す、未来

タバサ編・17

「本格的な侵攻を始める」

総帥の言葉に、四天王は全員 表情を変化させる。
来るべき時が来た、そんな気さえする。

「亜種との全面戦争は避けられぬだろう。
 今度こそ奴等を倒せ」

クラブは口元に微笑を浮かべている。

『スザクとの対決…か。
 あの青年はきっと更に強くなる。
 誰よりも…な』

前回の傷も既に癒えている頃だろう。
総帥もそれは判っている筈だ。

『純粋に楽しみだ…』

この感想はクラブだけではない。
スペードもまた、同じであった。

* * * * * *

「…何だって?」

突然の申し出に驚きの声を上げたのは轟だった。

いつでも丈はレジスタンスメンバーを驚かせる発言を
極自然に、普通に話し出す。

「人類との繋がりを強化するんだ。
 共にパラサイダーと戦う為に」
「しかしだな、丈…」

「人類も亜種も、数ではパラサイダーに敵わない。
 それに…解り合う時が来たと思うんだ。
 いつまでもいがみ合ってたって
 現状は一向に好転しない。
 寧ろ敵の思う壺だ」

丈は静かに、だが力強く
自分の思いを、気持ちを、考えを皆に語った。

「君は…本当にあの頃のままなんだね。
 時代も時空も超えたと云うのに、
 その思いは…ずっと変わらない」

漣が感慨深く言葉を紡ぐ。
疾風は先程から唯一人、黙って腕を組んだままだ。

「兄さん…?」

美雨の声に、彼は漸く反応した。
静かに一度だけ頷く。

「人類との架け橋。
 重大な任務になる。
 頼めるか…丈?」
「あぁ…必ず、繋いでみせる」

丈の力強い意思、その声に
全員が笑顔を浮かべた。

* * * * * *

「狙いを何処に絞る?」

ハートの提案に、クラブは腕組みをしたままだ。

「今、何処の動きが活発なのだ?」
「…B地区、だな」
「ならば其処を潰すか」

「問題は…レジスタンスのアジトに近いと云う事。
 これをどう回避する?」
「回避の必要は無い」
「?」

「軽量の部隊を送り込む。
 それならば転送を掛ける事も可能だ」
「…ダイヤを送ると云う事か。
 恋人に対する台詞とは思えないな」
「恋人だからこそ、甘やかさない。
 つまりはそう云う事だ」

「全く、姿だけでなくその言葉の重みでさえ
 総帥によく似ているな、クラブ」
「有難う。最高の賞賛だ」

クラブはフッと微笑むと、静かに部屋を後にした。
その後姿を見つめ、ハートが呟く。

「いよいよ…だな。
 私も自分の真価を問われる時が来たのか」

作戦室から出る事も無く、
後方支援に徹していた立場が大きく変わる。

戦えない訳では無かった。
今迄はその必要が無かっただけだ。

だが、レジスタンスは今や
彼女を戦場に引き吊り出す迄に強力となった。

「食うか食われるか。
 面白くなってきた……」

スクリーンに映し出されたスザク、丈の姿を見つめ
ハートは微笑を浮かべた。
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