総帥の言葉に、四天王は全員 表情を変化させる。
来るべき時が来た、そんな気さえする。
「亜種との全面戦争は避けられぬだろう。
今度こそ奴等を倒せ」
クラブは口元に微笑を浮かべている。
『スザクとの対決…か。
あの青年はきっと更に強くなる。
誰よりも…な』
前回の傷も既に癒えている頃だろう。
総帥もそれは判っている筈だ。
『純粋に楽しみだ…』
この感想はクラブだけではない。
スペードもまた、同じであった。
「…何だって?」
突然の申し出に驚きの声を上げたのは轟だった。
いつでも丈はレジスタンスメンバーを驚かせる発言を
極自然に、普通に話し出す。
「人類との繋がりを強化するんだ。
共にパラサイダーと戦う為に」
「しかしだな、丈…」
「人類も亜種も、数ではパラサイダーに敵わない。
それに…解り合う時が来たと思うんだ。
いつまでもいがみ合ってたって
現状は一向に好転しない。
寧ろ敵の思う壺だ」
丈は静かに、だが力強く
自分の思いを、気持ちを、考えを皆に語った。
「君は…本当にあの頃のままなんだね。
時代も時空も超えたと云うのに、
その思いは…ずっと変わらない」
漣が感慨深く言葉を紡ぐ。
疾風は先程から唯一人、黙って腕を組んだままだ。
「兄さん…?」
美雨の声に、彼は漸く反応した。
静かに一度だけ頷く。
「人類との架け橋。
重大な任務になる。
頼めるか…丈?」
「あぁ…必ず、繋いでみせる」
丈の力強い意思、その声に
全員が笑顔を浮かべた。
「狙いを何処に絞る?」
ハートの提案に、クラブは腕組みをしたままだ。
「今、何処の動きが活発なのだ?」
「…B地区、だな」
「ならば其処を潰すか」
「問題は…レジスタンスのアジトに近いと云う事。
これをどう回避する?」
「回避の必要は無い」
「?」
「軽量の部隊を送り込む。
それならば転送を掛ける事も可能だ」
「…ダイヤを送ると云う事か。
恋人に対する台詞とは思えないな」
「恋人だからこそ、甘やかさない。
つまりはそう云う事だ」
「全く、姿だけでなくその言葉の重みでさえ
総帥によく似ているな、クラブ」
「有難う。最高の賞賛だ」
クラブはフッと微笑むと、静かに部屋を後にした。
その後姿を見つめ、ハートが呟く。
「いよいよ…だな。
私も自分の真価を問われる時が来たのか」
作戦室から出る事も無く、
後方支援に徹していた立場が大きく変わる。
戦えない訳では無かった。
今迄はその必要が無かっただけだ。
だが、レジスタンスは今や
彼女を戦場に引き吊り出す迄に強力となった。
「食うか食われるか。
面白くなってきた……」
スクリーンに映し出されたスザク、丈の姿を見つめ
ハートは微笑を浮かべた。