勾玉の封印

タバサ編・19

会議室。
丈の旅立ちに際し、美雨が全員を呼び出した。

「どうしても行わないといけない
 大切な事があるの」

その姿に疾風は深刻な何かを感じ取った。

「全員、なんだな」
「えぇ…」
「解った」

そして今、戦士達が此処に集う。

* * * * * *

「話って何だ?」

轟の問い掛けに対し、美雨が静かに口を開いた。

「皆の勾玉について
 私だけが知ってる…
 私しか知らない事が有るの」

「それは…巫女しか知らないって事?」
「漣の言う通りよ。
 代々の巫女の記憶にのみ伝えられたもの。
 勾玉の封印」
「勾玉の…」

「四大元素を司る勾玉には
 その強大な力故に封印が施されているの。
 全ての勾玉と巫女が揃った時、
 封印を解く事が出来るわ」

「今迄の能力でも凄いってのに…
 封印を解いても問題無いのか?」
「今の轟達なら…大丈夫よ」
「美雨……」

「その資格が無ければ、
 私の記憶に『勾玉の封印』に関する事は
 何一つ蘇らなかった筈。
 認められてるんだよ、勾玉に」

美雨は終始、微笑を浮かべていた。

「勾玉が完全な力を取り戻したら
 行動範囲も格段に広がると思うわ。
 力の制御もし易くなる」
「行動範囲…?」

「以前丈が見せてくれた転送も
 完全体の勾玉の力の一種なの」
「…あの炎が」
「えぇ、そうよ」

「それ以上に…何かが起こりそうだな。
 そうだろう、美雨?」
「兄さんは気付いていたの?」

「まぁ、な。
 俺達の勾玉は自然界に直結している。
 それが解放されるとなれば…
 世界の変革に関わって来るって事だろう?」
「…そうなの。
 『太陽』を、呼べるかも知れない」

静かに彼女が口にした『太陽』と云う単語。
丈がこの世界にやって来て
未だに目にした事の無い物。

「太陽…か」

昔、自分が居た世界では当たり前だった太陽。
その存在の大きさを、改めて感じる。

「太陽が甦れば 大地が肥えるし、
 人々もカプセル食を採らなくても済むよ。
 台地の恵みを体内に取り入れる事が出来るんだ。
 昔の様に……」

科学者、そして医者として
感慨深く漣は呟いていた。

* * * * * *

「これは……」

その頃。
総帥はディスプレイに映し出された
バイオリズムのグラフを見つめていた。

「随分と波形が大きいな…。
 このバイオリズムは…美雨の物か」

画面に資料を複数呼び出し、照合させると
やがて彼は満足げに笑みを浮かべた。

「やはりそうか。
 此方の狙い通りに事が進んでいる。
 まぁ…寧ろそうなってもらわないと困る」

総帥の意図は四天王でさえも知らない。
誰にも語らない、その思い。

「さて……」

空調で、マントが静かに靡いている。

「暫くは様子見と行こうか。
 この世界をどう変えていくのか、
 その辺りにも興味が有る」

総帥は画面を戻した。
ターゲットとなる場所をスクリーンに映し、
それを只、静かに見つめる。

「人間との共存、か……」
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