モニターを見ていた轟が慌てて
漣の居る医務室に駆け込んできた。
「どうした?」
「パラサイダーの集団です。
物凄い数が此処に向かっています」
「えっ?」
慌てた漣は依然昏睡状態の丈を見つめる。
「…我々は人類の『砦』だ。
敗れる訳にはいかない」
「四天王も出てきますね。
タップリお礼参りが出来るって訳だ」
「疾風…」
「俺は許さない。丈をこんな目に遭わせた奴等を…」
「俺もだぜ、疾風。
この身が砕けても思いは消えない。必ず…敵を討つ」
「轟…」
「武装準備だ。漣、中は頼むぞ」
「はい…」
「万が一の時は…戦うしかない。
解るな?」
「勿論です…」
漣も覚悟を決めた様だった。
彼は基本的に戦うのが嫌いなだけで
戦えない訳ではない。
恵一がそれを何よりもよく理解している。
「迎え撃つぞ!」
恵一の声に、全員が力強く頷いた。
「何…?」
まどろみの中、
丈は異変に気が付いていた。
「俺…行かないと……」
だが体が動かない。
傷付いた体は
意識までも障害を引き起こしていた。
「こんな所で…負けたくない……」
『信じなさい、自分の力を……』
「貴女は…誰……?」
『貴方と、最も近い存在』
「?」
『第三の瞳を…目覚めさせなさい。
貴方の力の封印を…今、解き放ちます』
「封印…?」
『愛する者を守るのです。
その為に貴方は戦うのだから』
「愛する…者……」
『貴方の炎は…人々を守る力。
人々に温もりを与える力。
貴方は……』
「待って! まだ、俺は聞きたい事が……」
『目覚メナサイ』
丈の脳裏に響く声。
そして漲る力。
全身を炎が包み込む。
「護るんだ…。俺が、皆を……」
丈の決意が新たな炎を呼ぶ。
その炎が翼を形作る。
「奴が…スペードが来る。
今度は…負けない……」
丈の意識は目覚しい勢いで
回復を促していた。
「この機会に残党狩りとは
総帥も兵法をよく御存知で…」
大軍を率いたダイヤに笑みが洩れる。
「油断するな、ダイヤ。
亜種は人間と違う。
奴等は不思議な武器と『呪』を操る。
舐めてかかると痛い目を見るぞ」
「解ってるよ、クラブ」
「ふん。軍師風情に解るものか…」
スペードは面白くないとばかりに口を挟んだ。
「まぁ良い。砦を落とせば
スザクは俺の物になる…」
「……」
スペードの執着は解っている。
『いざと云う時に消さなければならないのは…
味方かも知れんな……』
クラブは一人、心の中で呟いた。