迫り来る危機

タバサ編・2

「団長!」

モニターを見ていた轟が慌てて
漣の居る医務室に駆け込んできた。

「どうした?」
「パラサイダーの集団です。
 物凄い数が此処に向かっています」

「えっ?」

慌てた漣は依然昏睡状態の丈を見つめる。

「…我々は人類の『砦』だ。
 敗れる訳にはいかない」

「四天王も出てきますね。
 タップリお礼参りが出来るって訳だ」
「疾風…」
「俺は許さない。丈をこんな目に遭わせた奴等を…」
「俺もだぜ、疾風。
 この身が砕けても思いは消えない。必ず…敵を討つ」
「轟…」

「武装準備だ。漣、中は頼むぞ」
「はい…」
「万が一の時は…戦うしかない。
 解るな?」
「勿論です…」

漣も覚悟を決めた様だった。
彼は基本的に戦うのが嫌いなだけで
戦えない訳ではない。
恵一がそれを何よりもよく理解している。

「迎え撃つぞ!」

恵一の声に、全員が力強く頷いた。

* * * * * *

「何…?」

まどろみの中、
丈は異変に気が付いていた。

「俺…行かないと……」

だが体が動かない。
傷付いた体は
意識までも障害を引き起こしていた。

「こんな所で…負けたくない……」

『信じなさい、自分の力を……』
「貴女は…誰……?」
『貴方と、最も近い存在』
「?」

『第三の瞳を…目覚めさせなさい。
 貴方の力の封印を…今、解き放ちます』
「封印…?」
『愛する者を守るのです。
 その為に貴方は戦うのだから』
「愛する…者……」

『貴方の炎は…人々を守る力。
 人々に温もりを与える力。
 貴方は……』
「待って! まだ、俺は聞きたい事が……」
『目覚メナサイ』

丈の脳裏に響く声。
そして漲る力。

全身を炎が包み込む。

「護るんだ…。俺が、皆を……」

丈の決意が新たな炎を呼ぶ。
その炎が翼を形作る。

「奴が…スペードが来る。
 今度は…負けない……」

丈の意識は目覚しい勢いで
回復を促していた。

* * * * * *

「この機会に残党狩りとは
 総帥も兵法をよく御存知で…」

大軍を率いたダイヤに笑みが洩れる。

「油断するな、ダイヤ。
 亜種は人間と違う。
 奴等は不思議な武器と『呪』を操る。
 舐めてかかると痛い目を見るぞ」
「解ってるよ、クラブ」
「ふん。軍師風情に解るものか…」
スペードは面白くないとばかりに口を挟んだ。

「まぁ良い。砦を落とせば
 スザクは俺の物になる…」
「……」

スペードの執着は解っている。

『いざと云う時に消さなければならないのは…
 味方かも知れんな……』

クラブは一人、心の中で呟いた。
Home Index ←Back Next→