或る場所を除いては。
「いつか必ず『太陽』が現れるわ」
タバサはそう言うと
友である動物達と語らい合っていた。
「総帥。
美雨の居場所が絞れました」
ハートは情報を手に彼の元へと赴いた。
「迂闊でした。
レーダーに掛からない為にと
『結界』を張っていたかの様です」
「…『静かなる森』か」
「はい。仰る通りです」
「あの森には『意志』が有る。
森が美雨を『保護』していたと云う訳か」
総帥はそう呟くと
含み笑いを浮かべた。
「世界が『美雨』と云う存在を欲している。
そう思わないか、ハート?」
「…御意」
ハートは恭しく頭を垂れる。
「申し訳御座いません。
いずれにせよ、
時間が掛かり過ぎました…」
「良い。
美雨を手中に収めるのだ。
クラブ、スペード、ダイヤに通達しろ」
「はい」
「あぁ、…それと」
「何か?」
「『森』は燃やせ。
美雨を守る為に
必ず我等の邪魔をして来る筈だ」
「解りました。
その様に指示を出しておきます」
ハートがその場を去ると
総帥は更に笑みを浮かべた。
「さぁ、どう出てくる 亜種人類達よ?」
「何だか胸騒ぎする雨だね。
機械達の機嫌が悪いよ……」
漣のぼやきに疾風は
「気の所為だろう?」
と、返しただけだ。
「まぁ、疾風には解んないよね。
鈍感だモン」
「おいおい、漣…」
疾風の鋭い視線に気付いたのか
轟が横槍を入れる。
「あれ、丈は?」
「団長の所」
「だから疾風の機嫌が悪いのか。
病気だね」
「漣っ!!」
「うわっ!!」
疾風は無言で五鈷杵を構えている。
「室内でぶっ放すなよ!」
「暴力反対っ!!」
漣の研究室は珍しく賑やかだった。
「タバサ…か。
聞けば聞く程、不思議な少女だな」
恵一は静かに相槌を打ちながら
息子の話を聞いていた。
「そうなんだ。
俺の受けた感じだと
『美雨』の能力(ちから)に近い物がある。
もしかして彼女は……」
「その可能性は否定出来んな。
疾風にこの話は?」
「既にしてある。
親父、後になって御免…」
「いや、それで良いんだ」
恵一はそう言うと
優しく丈の頭を撫でてやった。
「俺、もう20歳だよ。
恥ずかしいよ……」
「幾つになっても
お前は私の大切な息子だ」
「親父…」
丈は嬉しそうに微笑を浮かべていた。