判 明

タバサ編・7

静かに雨が降り続く。
或る場所を除いては。

「いつか必ず『太陽』が現れるわ」

タバサはそう言うと
友である動物達と語らい合っていた。

* * * * * *

「総帥。
 美雨の居場所が絞れました」

ハートは情報を手に彼の元へと赴いた。

「迂闊でした。
 レーダーに掛からない為にと
 『結界』を張っていたかの様です」

「…『静かなる森』か」
「はい。仰る通りです」

「あの森には『意志』が有る。
 森が美雨を『保護』していたと云う訳か」

総帥はそう呟くと
含み笑いを浮かべた。

「世界が『美雨』と云う存在を欲している。
 そう思わないか、ハート?」
「…御意」

ハートは恭しく頭を垂れる。

「申し訳御座いません。
 いずれにせよ、
 時間が掛かり過ぎました…」
「良い。
 美雨を手中に収めるのだ。
 クラブ、スペード、ダイヤに通達しろ」
「はい」

「あぁ、…それと」
「何か?」

「『森』は燃やせ。
 美雨を守る為に
 必ず我等の邪魔をして来る筈だ」
「解りました。
 その様に指示を出しておきます」

ハートがその場を去ると
総帥は更に笑みを浮かべた。

「さぁ、どう出てくる 亜種人類達よ?」

* * * * * *

「何だか胸騒ぎする雨だね。
 機械達の機嫌が悪いよ……」

漣のぼやきに疾風は
「気の所為だろう?」
と、返しただけだ。

「まぁ、疾風には解んないよね。
 鈍感だモン」
「おいおい、漣…」

疾風の鋭い視線に気付いたのか
轟が横槍を入れる。

「あれ、丈は?」
「団長の所」
「だから疾風の機嫌が悪いのか。
 病気だね」

「漣っ!!」
「うわっ!!」

疾風は無言で五鈷杵を構えている。

「室内でぶっ放すなよ!」
「暴力反対っ!!」

漣の研究室は珍しく賑やかだった。

* * * * * *

「タバサ…か。
 聞けば聞く程、不思議な少女だな」

恵一は静かに相槌を打ちながら
息子の話を聞いていた。

「そうなんだ。
 俺の受けた感じだと
 『美雨』の能力(ちから)に近い物がある。
 もしかして彼女は……」

「その可能性は否定出来んな。
 疾風にこの話は?」
「既にしてある。
 親父、後になって御免…」
「いや、それで良いんだ」

恵一はそう言うと
優しく丈の頭を撫でてやった。

「俺、もう20歳だよ。
 恥ずかしいよ……」
「幾つになっても
 お前は私の大切な息子だ」
「親父…」

丈は嬉しそうに微笑を浮かべていた。
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