光の扉

人類共存編・10

ウムラウト達の説得は続いた。
流石に簡単には行かない事続きで
使者達の疲労も
目に見えて明らかだった。

だが、それでも
彼等は決して諦めない。
諦める訳にはいかない。

未来の為に。
次世代の生命の為に。
盟友の為に。

あの青年の様に。

「丈。必ずだ。
 必ず、君の願いを叶える」

ウムラウトの決意は固い。
そして、その決意こそが
人類を動かす大きな切っ掛けと
なったのである。

時代は確実に動き始めていた。

* * * * * *

「ウムラウトから連絡が入ったよ!」

漣の声に
全員がモニター前に集まった。

直ぐに連絡が取り合える様に、と
彼がウムラウトに渡した
簡易型連絡無線機が
早速活躍している。

『やぁ、諸君。
 連絡が遅くなって、済まな…い』
「無線だからやっぱり
 多少のノイズは入っちゃうか」

漣は必死にチャンネルを調節しながら
ウムラウトの電波を拾おうと必死だ。

「ウムラウト。
 此方の声は聞こえる?」
『…良好、だ。
 映像も…良く見える…』
「良かった。
 コッチは今、調整中だから…
 一寸待ってて」
『了解した』

漣は集中してチャンネルを合わせていく。
多少時間は掛かったものの
映像も音声も格段にクリアになった。

「お待たせ。OKだよ」
『有難う。
 亜種人類の技術と云うのは
 実に素晴らしいものだな』
「使い方さえ間違わなければね。
 技術も科学も、方法が違えば
 立派な武器になってしまう」
『そうだな。
 きっと我々人類は…
 大いなる過ちを犯した為に
 この地を地獄に変えてしまったのだろう』
「未来は、変えられるよ」

漣の声はまるで澄んだ水の様に
周囲の者に染み込んで行く。

「僕達は未来を変える為に闘う。
 そう、誓った筈だよ」
『そうだな…。
 そうだとも、変えるのだ』

ウムラウトは一度静かに目を閉じ、
何かを決意した様に頷くと
再度目を開いた。

その目には確かな『光』が宿っていた。

『多少時間は掛かったが、
 現存村落の80%の同意を得た。
 100%迄派はもう少し掛かるが…』
「80%も同意させたのか…」
『疾風…』

「充分だ、ウムラウト。
 それだけ有れば、パラサイダーの軍勢と
 まともに闘える筈だ」
『そうだろうか…?』
「大丈夫だ。
 この闘いで全てを終わらせる」

疾風の今の言葉に
ウムラウトは何かを察したのだろう。
力強く頷き返した。

『判ったんだな。
 奴等の本拠地が…』
「あぁ…。
 丈が、見つけた」
『丈が…』

感慨深いウムラウトの声に
疾風は彼と自分に通じる『何か』を感じた。

同じなのかも知れない。
彼も又、丈に導かれた者。
丈に拠って、未来の扉を自力で開いた者。

『丈に…宜しく伝えてくれ』

笑顔と共に、ウムラウトの通信は其処で途絶えた。
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