リーダーとの出会い

人類共存編・3

投獄されてから3日経過していた。

丈は改めて人間の組織に面通りを願い、漸く叶えられた。
勿論、精密検査
(とは言っても漣の装置に比べれば随分簡易型である)を受け
その結果、「パラサイダーではない」と判明してからではあったが。

「済まなかったな」

開口一番、人類側のリーダー格である男は
丈に詫びて来た。

その潔さは疾風を思わせる。

「いや、気にしないで下さい。
 疑われるのは仕方が無い事だと思うから」

残念だが、事実である。
そうならない為に、その為に自分は此処に居るのだから。

「それにしても…亜種人類、だと言ったか?
 外見は殆ど我々と変わらないな」
「はい。普段は貴方々と似たような生活を送ってると思います」
「食事は?」
「カプセル食です」
「…同じだな、全く」
リーダーは苦笑を浮かべている。

「こんなに猜疑心だらけでは…
 いずれ人類は滅びてしまうだろう。
 自集落以外は人間だと認めず、
 醜い争いを繰り返し…今に至る」

「…だからこの界隈に人が…?」
「そうだ。愚かな結果の成れの果てだ」
「……」

「丈、と言ったな」
「はい…」

「随分と綺麗な目をしている。
 人間の中でもそのような澄んだ目をしているのは
 数えるほどしか存在しないだろう」
「……えっと…」
「子供達が君を信じたのは…その目の輝きか」

目の輝きを褒められたのは今回が初めてではない。
確かに、出会った人々が口々に唱えたのは
彼の目の輝き。
迷う事の無い、真っ直ぐな視線が心地良いのだと言う。

「君の望みを聞こうか」

リーダーは真剣な眼差しで丈を見つめる。

「…俺の、亜種人類の願いは……」

この言葉が未来を決める。
丈は気持ちを新たに、口を開いた。

光溢れる未来を、仲間達に齎す為の戦いが始まっていた。

* * * * * *

「…あれ?」

その頃、レジスタンスのアジトでは。
漣がB地区界隈の状況を確認していたのだが
不意に奇妙な声を上げた。

「この数値…。人間の物とは波形が違う」

其処まで声に出し、流石に彼は何かを掴んだらしい。

そのまま研究室を飛び出し、
会議室へと向かって走っていた。
会議室には大抵、疾風か轟が居る。

「大変だよっ!!」

叫びながら駆け込んで来た漣に、2人も何かを察知した。

「パラサイダーか? 何処だ」
「轟! 此処じゃない…。
 B地区に……っ!!」
「何っ?!」

轟は大声で叫び、視線を疾風に向けた。

先程から殆ど動じない疾風に
漣と轟は顔を見合わせる。

「…あれ?」
「そう来るだろうって事は予測済みだ」
「予測済みって……?」

「丈とパラサイダーの動きについては見当を重ねてある。
 問題はその数だが、多いか?」
「いや…それが、いつもの大群ではないみたいだ」
「やはりそうか…」
「どう云う事だ、疾風?」

「パラサイダーのアジトからB地区までは距離が有り、
 更に俺達の拠点を挟んでいる。
 だから軽量軍を転送させる方法を採ったんだろう」
「…成程」

「先発隊かも知れん。
 だが、それを完全に潰せば…」
「奴等は計画を練り直すしかないって訳か…」
「そう云う事だ」

疾風はフッと笑みを浮かべると
轟の肩を叩く。

「ダイヤが間違い無く先発隊で来る。
 敵を取りに行くぞ」
「…疾風」

彼は覚えていた。
轟の無念も、苦しみの記憶も。
だからこそ、果たしてやりたいと願う。

その気持ちはまるで、炎に愛されたあの青年の様に。

「漣。座標を知らせてくれ。
 俺と轟が其処へ飛ぶ」
「…解った。じゃあ僕は美雨と留守番しておくよ」

漣は漸く持ち前の笑顔を取り戻し、
また慌しく研究室へと戻っていった。
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