漣は、以前入手した謎の衣類についての解析を
漸く完了する事が出来た。
脅威の事実が判明した。
「人工鉱石を繊維化した素材…。
こんな技術をパラサイダーが持っていたと言うのか?」
唸りながら解析データを睨み付ける。
「やっぱりそうだ。
古代亜種人類が持ち合わせていた技術と似通ってる」
今、自分達が着用しているテクノライト製防具よりも
更に戦闘に適した素材。
これを改良する事が出来れば、更に味方が有利に動ける筈だ。
「やって…みるかな?」
漣は最後の時間が近付いている事を感じ取っていた。
丈は必ず人類との強固な関係を築いて帰って来る。
最終決戦は、目の前にまで迫って来ていた。
「団長に助けてもらってから今日まで…。
長いようで短い時間だった」
瞳を閉じ、そっと思い出す恵一の姿。
「団長…。必ず、勝ちますよ」
漣はそっと誓いを呟くと
険しい表情を浮かべて自身の戦いを開始した。
他の場所からやって来た友達に『花』を見せてあげたいと思った。
いつもの、自分のお気に入りの場所。
其処だけは昔から色取り取りの花が絨毯の様に咲いている。
少女は夢中になって花を選んでいた。
忍び寄る軍勢など気付く訳も無く。
その時、けたたましいサイレンが鳴り響いた。
「…?」
「パラサイダーの襲来だ」
「パラサイダーが…」
モニターに移るのは集落の正面。唯一の出入口。
巨大な門がゆっくりと閉じていく。
『あの巨大な門で攻撃を防いできたのか…』
丈は険しい表情でモニターの映像を見つめていた。
「ん?」
その目に映る、女性と子供達の映像。
泣いて何かを懇願する姿。
尋常ではないその雰囲気に、思わず彼はリーダーの顔を見た。
「…どうした?」
「門兵と揉めているのか?
あの騒ぎは一体……」
「…此処からでは良く判らんな。
我々も行こう」
丈はゆっくりと頷き、その後を追った。
近くで見ると確かにその扉は頑丈そうな造りだった。
一度閉じればそう簡単には開かないだろう。
『しかし、空からの攻撃には全く無意味だ…』
自身も飛行攻撃を得意としているだけに
丈はこの鉄壁の守りの『弱点』を見抜いてしまっていた。
四天王であれば、間違いなく『其処』を突いて来る。
「長…」
門兵の1人が事情を簡潔に説明した。
扉を閉めてから、或る少女の行方が判らなくなったらしい。
どうやら外に出て行ったきり戻って来ていないのだ。
「じゃあ…その子が帰って来たらどうするんですか?」
「どうするも何も無いだろう?
この扉は絶対に開けられない。
皆が食われてしまっては元も子もないだろう」
「…見殺しにするって事なんですか?」
「余所者にとやかく言われたくないよ」
門兵は話を聞き入れる態度ではない。
丈は思わず溜息を吐いた。