Get your Victory!

人類共存編・6

「話の内容から行くと、この先だよな…」

丈は上空からレノの姿を捜していた。

見渡す限りの砂地。
花畑は見付からない。

「急がないと。
 パラサイダーが到着する前に…」

丈は高度を少し上げ、より広範囲を探索出来るようにした。

* * * * * *

「子鼠が。腹の足しにもならないな」

レノは動けなかった。
恐怖のあまり、動けずにいた。

パラサイダーの軍隊。
その中央に位置するダイヤ。
感情の無い、鋭い瞳。

持っていた花束を落とさないように抱きしめながら
レノは恐怖と戦っている。

「取り敢えず食っておくか?」

ダイヤがそう呟き、不気味な笑みを浮かべた。

『丈…お兄ちゃん、助けて…!!』

レノが目を閉じ、祈るように『彼』を呼んだ。

正にその時だった。

「?!」

レノを護るかのように、炎の壁が出現したのだ。
にも関わらず、花畑には何の影響も無い。

「スザク…っ!!」

忌々しげに上空を見やると
其処には大きく翼を広げ、五鈷杵を構える丈の姿が在った。

「先陣か、ダイヤ」
「此処で貴様を喰らってやるっ!!」
「此処から先は一歩も進ませない」

丈はレノの近くに舞い降りると、彼女に優しく微笑んだ。

「遅くなって御免。怖かっただろう?」
「お兄ちゃん…」
「一緒に帰ろうな。お母さんも、皆も待ってる」
「捜しに来てくれたの? どうして?」
「友達だもん。当たり前だよ」

レノは漸く恐怖から解放された。
丈に抱きつき、激しく泣き出す。
優しく背中を擦り、彼はレノに囁いた。

「俺がアイツ等と戦っている間は
 此処から絶対動かないで。
 約束してくれるかい?」
「…うん」
「良い子だね、レノ。うん、約束だよ。
 直ぐに終わらせるから」

もう一度しっかりとレノを抱き締めて安心させてから、
丈は炎の結界から外へと出て来た。

その表情に思わずダイヤは息を呑んだ。

『何だ、この威圧感? 総帥と同じ…。
 まさか、そんなまさか…?!』

「この地より立ち去れ、ダイヤ」

鋭い、凛とした声。
確かにそれは、総帥と酷似していた。

「…認めない」

ダイヤは自身に芽生えた考えを払拭すべく、
激しく叫んだ。

「奴を倒せ! 食い殺せっ!!」
「…止むを得ないか」

やはり説得には応じない。
力で捻じ伏せるしかない。

そう考えを改めた丈の動きは速かった。
素早く接近し、先ずは空中部隊に切り掛かっていた。
勿論、『扉』対策である。

炎の呪を行使し、剣に乗せて敵を斬る。
彼で無ければ出来ない芸当だ。

「…化け物め」

右小指の爪を激しく噛み締め、ダイヤは苛立つだけだ。
実際に己の技のみで戦って来た者と軍師の差が
克明に彼に圧し掛かる。

「何故勝てない? 何故だ?」

勝利の見えない戦い。
天才軍師、ダイヤの自信は確かに崩壊寸前だった。
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