造られた『人種』・3

決戦前夜編・5

「亜種人類の祖先達は
 多くの犠牲を黙って見過ごしては居なかった。
 反旗を翻す瞬間を虎視眈々と狙っていた。
 自身の能力を上昇させながら」

ソリティアは瞳を閉じ、深く息を吐き出した。
『その瞬間』が網膜に鮮明に描かれていく。

「そして、我々は…
 生みの親に当たる研究者達を…
 抹殺した」
「…その怒りも手段も、
 当然の事でしょう」
「今となっては解らぬがな」

ソリティアはまだ瞳を閉じたままだ。

「蝙蝠のツヴァイ、蜥蜴のドライ、
 ホワイトタイガーのフィーア…
 そして、紅き鷹のフュンフ」
「たった5名だけ…」
「唯一の生存者だ」

此処で漸く、ソリティアは目を開けた。
何かの決意が感じられる鋭い瞳。

「我々は故郷を捨てた。
 奴等が戯れで生み出した時空転移装置を改良し
 新たな世界に向けて旅立ったのだ。
 永遠の平安を求めて、な」
「では、今の亜種人類は…」
「彼等の転生体でもあり、子孫でもある」
「…成程」

セカンドの中にも何かが芽生えていた。
パラサイダー幹部、クラブとしてではない。
ソリティアの息子にして、ファーストの弟。
亜種人類の一人としての、決意が。

「私は同族と戦わねばならないのですね」
「…そうだな」

ソリティアの言葉に、セカンドは微笑を浮かべた。

* * * * * *

『最期の言葉には呪いが含まれていました。
 造られた生命体よ、お前達に平穏は訪れない…と』

丈の母、紅き鷹のフュンフは
そう呟き 俯いた。

『仕方が無い事。
 私達は親殺しの罪を背負って
 生きていかなければならない。
 しかし…子供達には何の咎も無い』

「ソリティアさんとは…その後?」
『ツヴァイ達とは途中で生き別れてしまい
 この地に辿り着いたのはソリティアと私だけ。
 2人で力を合わせて生きていこうと
 その時に誓い合ったのです』

「でも、さっきの映像だと…」
『ツヴァイ達はどうやら過去に飛んだようですね。
 そして…丈と出逢った』
「丈は、何故…過去に?」

フュンフは微笑を浮かべている。
そして再び、映像が脳裏に展開された。
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