準備完了

最終血戦編・1

漣より渡された服に腕を通し、
レジスタンスメンバーはそれぞれに
思いを新たにしていた。

此処までの道程を
長く感じる者、短く感じる者。
しかし、見つめる未来は同じである。

「これから全員でZ地区へ向かう」

疾風の発言に対し、丈達は静かに頷いた。

「ウムラウト達は既に進軍中だ。
 最後の会議をZ地区で行う」
「激突するのはそれからだな」
「そう言う事になるわね」

轟の武者震いに美雨は微笑みで答えた。

「一気に飛ぶぞ。準備は良いな?」

疾風が号令をかけ仲間達はそれぞれに、
快く同意をしていた。

* * * * * *

一方、パラサイダー本部。

慌しい研究室内で
ハートは静かに画面を見つめている。

「此処迄で限界…か。
 ダイヤの改造はこれで終了だな」

データを再構築し、保存し、
一連の作業を終了させた。

「そう云えば…
 最近、またクラブの姿が見えなくなった」

決戦を控え、少し話がしたいと思っていた。
だが、そんな時ほど
彼が姿を見せないし、不在なのである。

「仕方があるまいな。
 彼も自身の準備に勤しんでいるのだろう。
 これは私のエゴにしか過ぎない」

ハートはそう呟くと、そのまま席を立ち
部下でもあるスタッフに2~3言付けると
静かに研究室を後にした。

* * * * * *

ソリティア総帥は相変わらず
誰も立ち入らないこの場所で
唯一人、刻々と流れる時間を感じていた。

モニターには愛しい息子達の成長記録。
ファースト=丈とセカンド=クラブが
とても嬉しそうに語らい合っている。
時折甘えてくるクラブに対し
丈は何度も彼の頭を撫で、優しく微笑む。

その際、必ず見える風景。
丈の両手に巻かれた包帯が
何とも非常に痛々しい。

あの忌まわしい落雷事件から間無しの記録。

間も無く誕生する所まで来ていたクラブ。
彼の生命維持装置を主電力部が
落雷を直撃し、ケーブルが切断されてしまった。

異常を確認した直後の丈の動きは速かった。
彼を助ける為に、躊躇する事無く
切断されたケーブルを掴み、
繋ぎ合わせようとしたのである。

丈は既に炎の勾玉の力を有しており
ケーブルの溶接には30分程で完了した。
しかし、その間もケーブルから流れる
大量の漏電は容赦無く彼を襲い、
その際に酷い火傷を負ってしまったのだった。

漏電、そして落雷による再三のショックを
何度も丈を苦しめたが、
彼は決してケーブルを放さなかった。

無理も無い。
一人息子として生まれ、母を失い。
父親として、彼に何とか
家族の温もりを与えたいと思っていた。
「何が欲しい?」の質問に対し、
彼は「兄弟が欲しい」と答えた。
その願いがクラブであり、
漸く誕生する…正にその時だったのだ。

「本当に…ソックリだったよ」

総帥の脳裏で、丈の姿が誰かと重なる。
気も遠くなる程の昔。
確かに出会った、1人の青年の姿と。
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