決着・2

最終血戦編・10

「ハート? どうして僕を…」

勢いに負け、裂けてしまった腕。
其処から夥しい血が流れている。
漣は慌てて止血を施そうとしたが
ハートは笑顔でそれを制した。

「無駄だ…」
「無駄じゃないだろ? 手当てをすればきっと…」
「その気持ちだけで、嬉しい」
「ハート…」
「忘れるな、我等は敵同士…。
 殺し合う為に、此処で出会った…筈……」

ゆっくり、たどたどしいながらも
ハートは笑みを浮かべたまま語る。
せめて消えゆく生命ならば
その前に、彼にだけは知って欲しかったのだ。
【パラサイダー】と云う存在を。

「総帥の御子、ファースト様を食らった
 愚かな旧人類の成れの果て…。
 人を食らわねば、生きていけない呪われた種。
 XX型には従来のメス種とは違い
 子を成す能力は無い…」
「……」
「何の為に生まれたのか、それが…知りたかった……」

ハートの目から涙が一筋流れ落ちた。

「答えは、見付けたのかい?」
「あぁ…。私なりに、な……」
「そうか…。良かった……」
「お前の御蔭…。ありがとう、さざ…なみ……」

ハートはそのまま腕を拠点の最奥地へ向かう扉を指す。
先に進めと言っているのだ。

「ハー……」

【彼女】は絶命していた。
XY型とは違い、そもそも戦いには
向いていなかったのだろう。

「真実を、確認しなければね。
 【僕達】自身の力で…」

ハートを静かに横たわらせると
漣は手を合わせ、彼女に別れを告げた。

* * * * * *

交わされる光線と言葉。
疾風とクラブは互いの疑問をぶつけ合っていた。
何処で歯車が狂ってしまったのか。
二人は戦いながらその糸口を探っていた。

「何処迄も俺達は似た者同士だな」
「あぁ。だからこそ同じ男に惹かれた」
「クラブ」
「私は思慕。そしてお前は」
「愛情、だな」

こんな状況でさえ、二人には笑みがある。
互いに急所を狙って攻撃しているのにも関わらず
それでも笑みが零れてしまう。
それは【皮肉】でもあった。

「笑いが込み上げて来るぜ」
「同意だ。神の悪戯にな」
「お前が言う話が事実なら…
 パラサイダー総帥、ソリティアは
 この時代ではなくもっと未来から来たと?」
「そう。そして近い未来にこの星は崩壊する」
「何だとっ?!」
「お前の持つ風の勾玉。
 それはこの星のエネルギー体だ」
「これが…?」
「亜種人類の体を器として用いる事で
 奴等…自らを【ツークツワンク】と名乗る
 狂気の科学者達」
「【ツークツワンク】…。
 其奴等の存在を丈は……」
「恐らく、御存知の筈。
 正体は勿論、その企みの全貌もな」
「何てこった……」

クラブの告白に、疾風は頭を抱えた。
Home Index ←Back Next→