決着・3

最終血戦編・11

刃と刃の激しい激突音。
火花が飛び散る。
それでもまだ、決着は見えない。
果てしなく長い時間
二人はこうして戦い続けている。

言葉を交わす必要は無い。
又、そんな余裕すら無かった。

スペードが一瞬の隙を突き、突進を掛ける。
彼はこの一撃でケリを着けるつもりなのだ。
一切の防御を取らぬ、捨て身の攻撃に
彼の戦士としての矜持を感じ取った。
丈は迎え撃つべく、構え直す。

ガキーーーーンッ

澄んだ金属音が部屋中に木霊する。

奥歯を噛み締め立ち尽くすスペードは右手で
切断された左腕を抑えていた。

勝負は、ついた。
丈は後追いする事無く
静かにスペードを見つめている。

「強く、なりやがって…」

言葉程恨みは無いらしい。
満面の笑みを浮かべ、
スペードは丈を見つめていた。

「スペード……」
「これで、満足だ…。
 俺が生まれた、意味は…確かに、有った……」
「……そうか。良かった…」

戦いの中でしか、存在意義を見出せない。
そう考えれば
スペードも又、この時代の犠牲者なのだ。

「さて…と」

止血もままならないまま
彼は奥へと続く扉から離れる。
その足は、丈の背後にある出口へ。

「何処へ行く気だ、スペード?
 そんな状態で動けば、また血が…」
「この戦いで生き残ろうなんざ思っちゃいねぇ」

スペードは鋭い視線を丈に向けた。

「戦場が俺を待ってるんだよ」
「え…?」
「パラサイダーを殲滅する」
「な…っ?!」

スペードは自軍を滅ぼすと宣言した。
同じ血を受けし仲間を。
丈はその意味を理解出来ず、動揺の色を見せた。

「俺達は、滅ばなきゃいけない存在だ」
「スペード…?」
「歴史は修正しなきゃいけねぇ。
 俺達は滅びなきゃいけねぇ。
 それが…総帥の意志だ」
「そんな……」
「お前も、持ってるんだろうが。
 誰にも譲れない、お前だけの【目的】を」
「……っ」
「なら、振り返る事無く前を向きな。
 それが、何よりもの褒美となる」
「スペード……」
「じゃあな。【俺達パラサイダーの創造主】さん」
「……」

スペードは知っていたのだ。
自身の一族の成り立ちを。
今の彼はまるで、丈に討たれる為だけに
存在していたかの様だ。

スペードはそのまま何も言わず
静かに炎の砦を後にした。
砦の外で今も激戦を繰り広げている
パラサイダーを殲滅する為に。

「…俺は」

行かなければならない。
この先を。
それこそが、スペードの本願。

「行かなきゃ……」

涙が一筋、流れ落ちた。
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