修復の為の戦い

最終血戦編・12

戦場に緊張感が走る。
砦内部でレジスタンスと戦っていた筈の
四天王が一人、スペード。
その彼がこの地に姿を現したのだ。

手負いとはいえ、殺意を身に纏った彼は
そう簡単に倒されてはくれないだろう。

『…此処迄か』

ウムラウトは死を、人類の全滅を覚悟した。

「スペード!」

そんな彼の横を擦り抜け、
真っ直ぐにスペードに駆け寄る一筋の風。
美雨だった。

「美雨さんっ?!」

ウムラウトの声に笑顔で振り返ると
彼女はスペードの傷付いた左腕に触れた。

「手当てをしないと…」
「莫迦か、お前は」
「だって…」
「余計な事をするな。
 お前の能力は、この惑星ほしを救う為に在る。
 そうじゃなかったのかよ?」
「貴方…。どうして、それを?」

スペードは答えない。
意味深にニヤリと笑ったままだ。
だが、美雨には理解出来たのだろう。

「全てを、この惑星を救う為に……」
「そうだ。抗ってやる。
 全てを狂わせた莫迦野郎共にな」
「…この惑星を破壊に導いた存在。
 狂った科学者達ツークツワンク
「そうだ…。奴等の起こした過ちを、此処で正す。
 お前は神子として、惑星を救う。
 そして俺は…」

不意にスペードの視線が
美雨からパラサイダーの大軍に向けられた。

「この血を絶やす」
「!!」
「砦へ飛べ。スザクの、丈の後を追え」
「スペード……」
「勾玉の力を惑星に返す事が出来るのは…
 惑星の神子であるお前だけだ」
「……うん」
「それで、良い」

スペードは視線を合わせる事無く微笑んだ。
その寂しげな背中が丈を彷彿とさせる。

「もっと…違う形で貴方と会いたかった…。
 そうすれば、もっと分かり合えたかも……」
「それはどうだろうな。
 俺は相変わらずお前等の邪魔をしてたかも知れんぞ」
「…スペード」
「……だが、そんな出会いもしてみたかった」
「……」
「夢を見るってのも、悪くないな」

感極まり、美雨はそのまま勢いよく
スペードの背中に抱き着いた。
このまま死地へと向かわせたくなかった。

「おいおい。相手を間違えてるぞ?」
「今は…間違えてない……」
「泣いてるのか? 変な奴だな」
「……」
「…泣くな、美雨」

兄、疾風の様に鋭い声で
スペードは美雨を咎めた。

「時間が無い。砦へ迎え」
「……判った」

ゆっくりと体を離すと
美雨は涙を腕で拭きとり、踵を返した。

「スペード。約束するわ。
 私達は絶対にこの惑星を取り戻す」
「……期待してるぜ」

その言葉を最期に、スペードは勇猛果敢に
パラサイダーの大軍へと単身飛び込んだ。

スペードと美雨。
二人の会話を静かに見守っていたウムラウトは
スペードの戦士としての思いを重視し、
彼の邪魔にならない様 軍を配備し直した。

「美雨さん、行ってください!
 此処は我々に任せて!!」
「ウムラウトさん、皆さん…っ!
 後はお願いします!!」

美雨はそう叫ぶと左手の勾玉に念を込める。
彼女の姿が巨大な火柱に包まれる。
勾玉の能力で
彼女はテレポーテーションを行ったのだ。

「美雨さん…。
 この惑星を…お願いします」

軍を指揮しながら
ウムラウトは美雨に、そしてレジスタンスに
この惑星と人類の未来を託した。
Home Index ←Back Next→