狂った信望

最終血戦編・13

『僕は只、人類の可能性を信じただけだった。
 その為にZugzwangツークツワンクに加入し
 持てる才の全てを研究に捧げた。

 しかし…それが間違いである事に気付いた時には
 既に全てが手遅れだった。
 彼等はこの惑星のエネルギー体を
 四つの物質に変化させ、取り出してしまった。

 ライカンスロープ計画も…
 人類の進化の為ではなく、
 取り出したエネルギー体を安全に保管する
 生きた【器】を確保する為だけのもの……。

 僕は、愚かだった。
 僕が行った事は…全ての生きとし生けるもの達に対する
 【生命の冒涜】に過ぎなかった……』

ソリティアは唯一人、大広間に居た。
玉座の様に豪華な椅子に腰掛け
静かに或る青年の声に耳を傾けている。

『ソリティア。
 君がこのメッセージを耳にする時、
 僕は恐らく彼等に処刑され
 既にこの世に存在してはいないだろう…。

 本来ならば、犯した罪を償うのは
 この僕の役目の筈だった。
 僕が行わなければならない使命を
 君に託さなければならない。
 本当に…君には、君達には
 申し訳無いと思っている』

「ポーン……」

『親愛なる我が友、ソリティア。
 この惑星にエネルギー体【勾玉】を
 返還する術を君に伝授する』

カタン

誰から大広間に到着した様だ。

「…来たか」

ゆっくりと大扉が開かれる。
疾風、轟、漣、
そしてクラブ=セカンドの姿が其処に在った。

「役者が揃った…と言いたい所だが
 まだ足りない様だな」

ソリティアは椅子から微動だにする事無く
静かにそう言い放った。
舌打ちをして踏み出そうとした轟を
疾風が無言で制する。

「疾風。何故止める?」
「丈がまだ到着していない。
 俺達だけでは埒が明かん」
「…くそっ!!」
「僕にも解るよ、轟…。
 あの男、見た目以上の戦闘力を秘めている。
 真面にやり合うのは危険だ。
 疾風の言う通り、今はまだ動く時じゃない」

漣は冷静にソリティアの戦闘力を分析していた。
武装していない目の前の老人に
何をそれ程恐れるのかと
轟には理解出来ない様子だったが。

「クラブ。いや…セカンド。
 お前の言い分が確かなものならば
 あの男、総帥ソリティアは
 俺達と同じ亜種人類ライカンスロープなんだな」
「何っ?!」
「【黒豹のソリティア】」

疾風がその名を口にした直後
それ迄無表情だったソリティアの右眉が
微かにピクリと動いた。
Home Index ←Back Next→