再会の約束

最終血戦編・16

丈は真っ直ぐに
自分の父親であるソリティア総帥を
見つめている。

「覚悟は、出来ている様だな」
「…はい。
 母さんの瞳、漸く返せます」
「……」

それが何を意味するのか。
ソリティアと美雨は
同時に一瞬目を閉じた。

「疾風。漣さん、轟さん」

丈は笑顔を浮かべている。

「今迄 こんな俺を守り
 立派な戦士に育ててくれて
 本当に、ありがとう。
 皆とこの時代に出会えて
 本当に…良かった」
「何だよ、丈?
 そんな他人行儀みたいな言い方」

轟には、それが丈の最期の挨拶だと
理解出来なかった様だ。

「セカンド」
「はい、ファースト様」
「…【様】なんか必要無いって
 『いつも』言ってたよね」
 
苦笑を漏らした丈は
確かに覚えていた。
弟、セカンドの誕生と
その成長過程を。
そして、あの悲劇を。

「君は生き延びてくれ」
「しかし…」
「それが、俺と父さんの『願い』なんだ」

丈は再度ソリティアを見た。

「嘗ての母さんと同じ願い。
 俺の目を、セカンドへ」
「…解った」
「丈」

疾風の声に、微かだが丈の方が動いた。

「この地球を救う為だと話は聞いた。
 それに対して、
 お前が行動を起こそうとしている事も
 容易に想像がつく。
 だが、全てを終えた後
 お前は一体どうなるんだ?」
「全てを終えて、
 漸く本来の姿を取り戻すんだ。
 この惑星ほしも、この時代も…」
「俺の質問に対する
 【答え】になってないぞ、丈」
「俺から言えるのはここ迄なんだ。
 未来は誰にも判らない。だけど…」

丈の頬に涙が一筋流れ落ちた。

「又、逢いたい。
 皆と、そして…疾風と」
「丈……」
「又、逢えるよ」

そう二人に声を掛けたのは美雨だった。

「例え姿形が変わってしまっても
 私達は必ず貴方と再会を果たす。
 そうでしょ、兄さん?」
「美雨…。あぁ、そうだな」
「だから、丈を信じて。
 彼の想いを受け止めて。
 彼を、行かせてあげて」

丈の気持ちを知るからこその美雨の言葉に
レジスタンスは全員静かに頷いた。

「美雨、ありがとう。
 後は…任せたよ」
「えぇ、丈。
 私達は必ず、貴方の願いを叶えるから」

満面の笑みを浮かべ、
丈は確りと頷いた。

「では、行くか」
「はい」
「御意」
「クラブ」

疾風の声にクラブが振り返る。

「生き残れよ、お前だけは」
「セイリュウ……」
「俺は【疾風】だ。
 覚えておけ、…【セカンド】」
「…ふっ。その名で呼んでくれるか。
 我が最高の好敵手ライバル、疾風」
「その両眼に光が蘇る事を願っている」

嘗ての敵に送るべき言葉では無いかもしれない。
しかしこれが今の疾風の偽りなき思い。
そして誰よりも愛しい、丈の願い。

丈・ソリティア・クラブが静かに大広間を去って行く。
三人の姿が小さく消え去る迄
疾風達は黙ってその後姿を見守っていた。
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