生 贄

最終血戦編・18

「そろそろ始まる頃か」

ソリティアはそう呟き
目の前のカプセルを見つめている。

二つのカプセル。
二人の息子。

クラブの目の移植手術は無事に終わった。
残る手術は…
愛妻フュンフの目を丈から取り除く事。
しかし、それを行えば
彼の生命は其処で尽きる。

「丈よ…。それで、良いのだな?」
『あぁ』

脳裏に直接届けられた声。
テレパシーだった。

『母さんが担っていた【生贄サクリファイス】。
 それは、俺が引き継いだ』
「彼女を、美雨を救う為…か」
『それもある。
 美雨が居なくなってしまったら
 疾風は一体どうなる?
 たった一人の妹を喪う事になってしまう。
 それだけは、何としても防ぎたかった』
「それがお前の【本心】なのだな」
『…好きなんだ。
 あの二人が。あの【兄妹】が。
 だから……』

丈は笑っている…様だった。

『誰よりも幸せになって欲しい。
 因縁は全て俺が引き受ける』
「…やはりお前は、私達の子供だよ。
 よく似ている。何もかもが」

その言葉に丈は微笑み、クラブは涙を流す。
そしてこれが…
この親子の最期の会話となった。

* * * * * *

疾風達 四人は嘗て塔だった場所へと到着した。
その瞬間、勾玉が燦然と輝き出す。

「やはりこの場所で合ってたんだ…」

漣は自分の手から
勾玉が剝がれていく様子を見つめながら
静かにそう呟いた。

四人の手から分離した勾玉は
空中にゆっくりと舞い上がり、
一つの球体となって光り輝いている。
しかし。

惑星ほしに…戻らない?」

漣は不安そうな声を上げた。
空中に漂い、まるで太陽の様に振舞う球体。
それは一向に地面へ、
惑星内部へと移動しようとしなかった。
Home Index ←Back Next→