五つの誓い

最終血戦編・19

「…何故?」
『まさかとは思うが、失敗したのか?』

疾風のテレパシーに
全員が一斉にハッと息を吞んだ。

『フュンフの存在だ。
 彼女と惑星ほし
 何らかの形で遣り取りしていたからこそ
 エネルギー体は勾玉と化して
 俺達に持たせる事が出来た…』
『その逆を行うと云う事は、やはり…』
『巫女の存在、か。
 美雨、フュンフから何か聞いていなかったか?』
「いいえ…。
 ただ、丈は何かを知っていたみたいで…」

そう言い掛け、美雨は或る場所に視線を向けた。

『美雨?』
『どうした、美雨?』
『何か遭ったの?』
「…セカンド?
 どうして、此処へ?」

丈の両目を受け継いだクラブが
其処に立っている。
少し悲しげな表情は
やはり、丈を彷彿とさせた。

「もう大丈夫」
「え?」
「【五つの誓い】は果たされた。
 時空を超え、五人の思いは今…
 Zugzwangツークツワンクの野望を打ち砕く」

クラブのこの発言の直後
中央に位置する場所が大きく揺れた。

「あの場所は…」
『丈?!』
「この儀式には…勾玉だけでなく
 惑星と繋ぐ存在…【生贄サクリファイス】が必要不可欠。
 母上様は、この儀式で唯一生き残った神子」
「じゃあ……」
「だが、母上様は兄 ファースト様…
 丈様を身籠った事で急激に弱られていった。
 丈様に宿った炎の勾玉が
 母上様の生命を削り取っていったから」
「……」
「我々家族にとって勾玉は…
 呪いの様な存在だった」
「セカンド…」
「しかし」

クラブは静かに美雨を見つめる。
美雨も又、黙ってクラブを見つめ返す。

「母上様の目を受け継いだ事で
 丈様は神子の力を有した。
 この世界に二人の神子が存在する。
 それが意味するのは」
『丈は…美雨が本来負うべき宿命を
 自分で背負う事にした…。
 そう言いたいんだな』
「そうだ。疾風の言う通り。
 そして、願いは成就する」
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